DNA配列に直接依存しないで発現が制御されるシステムは、エピジェネティクスとよばれ、生活習慣病などの背景ともなるため、重要な制御である。それ故、エピジェネティクスを理解する、または理解する手法を確立することは重要なことである。
核タンパク質であるヒストンH3の9番目のリシン(K9)をトリメチル化した場合に特異的に認識する蛋白質に、HP1(Heterochromatin Protein 1)がある。ヒトでは、HP1は3種類あり、生理的な機能は異なっている。しかし、トリメチル化K9を含む合成ペプチドを基質に用いた場合、3種はほぼ同じ性質をしており、アイソフォーム特異的機能がどのようにして引き起こされるかという分子機構は明らかでない。私は、2015年にK9をトリメチル化したヒストンH3を用いてヌクレオソームを再構成し、それを生化学的に結合基質にすることでアイソフォーム特異的な認識があると報告した。
本年度は、K9をトリメチル化したヒストンH3を含むヌクレオソームが、HP1によりどのように認識されるかを計算によるシュミレーションで解析する共同研究を行った。シュミレーションでも以前に報告したHP1アイソフォーム特異的結合を見出すことができ、さらにその上、HP1分子に新たなDNA結合部位が示唆された。その新DNA結合能のついて、HP1の変異体を組換え体を作成し、生化学的解析を進めた。結果として、新DNA結合能の実在を確認し、修飾認識タンパク質研究の一つの型を提案することができた。
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