研究課題
メタルバイオロジーが急速な発展を遂げる現代において「難培養微生物群」と産業上の重要な「レアメタル類」が共存する深海底下生命圏は、残されたフロンティアの地とされる。平成29年度研究は深海メタゲノム分析の総仕上げにあたる。まず、解析後384クローンから推定された「金属応答要素群」の大別化に成功した(論文投稿中):I群,転写制御因子に類縁のタイプ;Ⅱ群,リボスイッチ型核酸配列(c-di-GMP結合因子など);Ⅲ群,鉄イオン(バイオメタル)応答因子に類縁のタイプ;Ⅳ群,機序不明プロモータ様配列。実際、その大半は(配列相同性依存の)前世紀型分子生物学では検出困難な新情報で占められていたことからも、今回の「SIGEX」技術は、探索ベースの萌芽研究において圧倒的な優位性を示すことが分かった。但し、より先の機能/機作を応用した発展研究まで進むには、大規模データによる「メタゲノム分別」等、更なる検討の余地を残した。かかるメタゲノム分析の「弱み」を克服するため、新たな課題にも着手した。注目したのは、堆肥から深海底まで、ほぼあらゆる環境に堪える(適応できる)「超広域環境微生物」の存在で、一般土壌微生物「巨大菌」をターゲットとした。高C/N比の富栄養下で「ポリヒドロキシアルカン酸」とよばれるバイオプラスチック高分子を蓄積するが、低C/N比かつ海水にも匹敵する高塩条件に曝すと、一転して「ポリγグルタミン酸(PGA)」を生産しはじめる。外部刺激に応じて環境適応因子の代謝経路を転換する等、高度な適応戦略を備えていることを示す。レアメタルでも特に利用価値の高い「Dy」存在下ではPGAの増産に加え、菌体の増殖速度から終密度まで増大した。“レアメタル(=重金属)=毒性物質”というこれまでの構図を一変させる発見である。該PGA合成遺伝子群には上記I及びⅡ群の認識部位が融合したような興味深い制御配列も見つかった。
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Scientific Reports
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10.1038/s41598-018-23017-x
The FEBS Journal
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