研究課題/領域番号 |
15K14423
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
桑田 文幸 日本大学, 歯学部, 特任教授 (60120440)
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研究分担者 |
谷口 奈央 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (60372885)
中野 善夫 日本大学, 歯学部, 准教授 (80253459)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 系統解析 / 菌叢解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、微生物ゲノムの連続塩基出現頻度を利用して系統解析や菌叢解析を行なうことを目的としている。そのための基礎情報として、ゲノム塩基配列の報告されている真正細菌2000種について、4~6連続塩基の出現頻度を集計した。塩基配列出現頻度に基づき距離を計算し、16S rRNA遺伝子配列では系統分類が難しいYersinia属、Streptococcus属、Escherichia coli/Shigella属について系統解析を試みた。概ね、良好な結果が得られ、16S rRNA遺伝子配列では分類困難だった菌株(strain)においても分類が可能になった。Streptococcus pneumoniaeとStreptococcus mitisにおいては、区別が困難であった。5塩基では512次元のベクトル間の距離を計算しなくてはならないが、出現頻度の偏りに基づくエントロピーを使った情報量の比較を行ない、上位15配列でほぼ同様の系統樹解析が行なえることを示した。これらの結果について第38回日本分子生物学会において、「n-gram塩基出現頻度に基つづく微生物系統樹解析」というタイトルで発表した。現在、ここまでの結果を論文にまとめている。 菌叢構成種解析については、上記連続塩基出現頻度データベースを利用して、菌の混合溶液からDNAを抽出して配列決定を行い、その情報を用いて菌の構成比を計算する方法を試したところ、概ね予想通りの結果が得られた。 そのほか、水平伝播遺伝子解析については、上記のように作成した4~6塩基連続塩基出現頻度データベースを用いて、1クラス・サポートベクターマシンを使って中心から外れた領域を選び出した。得られた結果からは、トランスポゾンやRNA 関連タンパクが検出されので、水平移動による由来か、配列に固有の特徴を持つ遺伝子領域が選ばれる傾向は確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
系統解析、菌叢構成種解析、水平伝播遺伝子解析いずれにおいても、おおむね計画通りに進んでいる。当初の計画と比べて、本年1月から調製していた口腔内細菌DNA試料が菌の生育状況により予定よりやや遅れて年度末の会計手続きのできない期間に入ってしまったところが計画よりも進展が遅れたということであるが、それは新年度に入れば計画通りに実施できるということから、「おおむね」という評価に相当すると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
系統解析:初年度で選んだ条件で、注目する菌種を選んで詳しい解析を試みる。また、Candidatus として分類が確定していないグループについて、系統分析を試みる。
菌叢構成種解析:実際の環境試料として口腔内細菌叢の解析を行ってみる。申請者らの研究グループでは、これまで T-RFLP の手法を用いた菌叢解析で口臭を予測する研究の経験があり、今回は福岡歯科大学で口臭外来を受診した患者およそ100人から唾液試料を採取し、そこに含ま れる細菌ゲノム DNA を精製してメタゲノム解析を行い、新たな手法で解析した菌叢分析と口臭の関係を調べることにする。菌叢分析から口臭の有無が予測できるかどうか検証する。
水平伝播遺伝子解析:初年度で選んだ条件で、水平伝播に由来すると推定される遺伝子群を解析する。すでに水平伝播に関係していると知られているトランスポゾンのようなものの他に、共通して出現する遺伝子や塩基配列を探索し、新たな水平伝播に関わる因子を見つける。また、個々の遺伝子の機能から、特に強い遺伝的特徴を水平伝播によって与えた遺伝子と種を見つける。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画全体にはほとんど影響がないが、本年1月を過ぎてから調製していた口腔内細菌DNA試料が菌の生育状態により予定より遅れ、会計手続のできない期間に入ってしまった。集めた口腔内細菌は冷凍保存しており、新年度になってから続きの処理を進める予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
新年度以降、凍結保存していた口腔内細菌試料および、新規に採取した試料からDNAを精製するときの試薬(DNA精製キット等)の購入に、新年度の助成金と合わせて充てることにする。この次年度使用額は分担者配分から発生しており、使用計画も分担者(福岡歯科大学)で実施するものである。
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