研究実績の概要 |
研究代表者らの先行研究により、国内河川水から自由生活性(自立的な増殖が可能)の極微小細菌Aurantimicrobium minutum を分離した。そのゲノムサイズは1.6 Mbp前後と推定され、近縁種のそれは3~4 Mbp であることから、本細菌がゲノム縮小の過程にあるという仮説に至った。本研究では、そのゲノム情報を精査し、寄生や共生性ではない自由生活性細菌のゲノムにおける縮小傾向を調べる。平成27年度においては、ゲノム解読に必要なDNA を抽出するために、極めて増殖の遅い本細菌の培養条件を最適化した。この生育特性の検討により、十分量のゲノムDNA を得ることができた。次に、そのゲノム解読を行い、完全ゲノム配列を取得した。事前に推定していた通り、そのゲノムサイズは1,622,386 bp(約1.6 Mbp)であった。予察的なゲノム情報解析の結果によると、本細菌の特徴としてタンパク質の合成に関わるrRNA オペロンが1個しかないことが見いだされた。たとえば、大腸菌ゲノムには7個のそれが存在する。もし一つのリボソームあたりのタンパク質合成の速度が概ね一定だとすると、細菌の増殖速度はリボソームの数によって制限される。このように、rRNA オペロンの数が本細菌の遅い増殖特性と関連していることが示唆された。現在、他の微生物ゲノムとの比較ゲノム解析を行っているところであり、普通の微生物ゲノムにみられる遺伝子群のうち、A. minutum ゲノムには存在しないものを解明していく予定である。
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