申請者らは、独自に開発した“分子バーコーディング”法の標準化を目標に、低コスト化と同時に測定分子数のダイナミックレンジの拡大を行ってきた。本研究では、分子バーコードの機能をより拡張させ、polyAが付加していないRNAも測定可能とすること、また、一塩基の違いを区別できる塩基同定精度を実現することを目的とした。この技術により、一塩基の精度で配列を同定すると同時に、一分子の分解能でハイスループットに定量計測できる技術の世界標準化を目指してきた。 まず、たくさんの種類のバーコード配列を準備し、目的の分子(ターゲット配列)に確率的に付加した。これにより、統計的に、それぞれのターゲット配列は異なるバーコード配列をもつ。その後増幅して、同じターゲット配列をもつ分子に対する分子バーコード配列の種類を計数した。これにより、バーコード配列が付加した増幅前の分子の絶対数を定量できた。この時、ターゲット配列において、予想したようにシークエンシングエラーが原因と考えられるエラー配列がたくさん見つかった。そこで、まず得られた配列を同じ分子バーコード毎にクラスター化した。同じバーコード配列を持つ分子は同じ分子から増幅されたことを意味するので、同じクラスター内でのターゲット配列は、エラーがなければ同じ配列になるはずである。この情報を用いて多数決の原理でエラーを同定するため、解析ソフトウェアを構築した。その結果、増幅前の配列を一塩基の精度で同定することができた。 1分子での定量精度と1塩基での配列同定精度を持つ本方法は、核酸を対象にした様々なハイスループット計測で利用されていくと考えられる。今後は、解析法のパイプライン化を実施し、世界に広めていきたいと考えている。
|