研究課題/領域番号 |
15K14426
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
梶 裕之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 研究グループ長 (80214302)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グライコプロテオミクス / グリコシレーション / 翻訳後修飾 / 質量分析 / 糖鎖不均一性 / マウス / グライコーム |
研究実績の概要 |
本研究は、マウス組織から調製した糖ペプチドを試料として、これを大規模に分析して糖鎖不均一性の実態を同定し、その生成、調節機構を推測することを目的としている。27年度は分析手法の確立とマウス主要組織データの集積開始を計画した。分析手法の確立は、試料調製法の改善、LC/MS分析手法の至適化、解析ソフトウェアの改善とパラメーターの至適化、の3つの課題を計画し、実施した。試料調製法は均質化、消化、糖ペプチド捕集条件を検討し、その後、グライコーム、糖ペプチドコア、糖ペプチドのデータ収集を小規模で実施して各条件の妥当性を確かめた。小スケール化については、可溶化、抽出、LC分離のスケールを変更し、同定数の確認と改善をした。LC/MS分析条件は、LCのグラジェント時間を通常の35分から最長300分まで延長し、データ取得規模を拡張した。MS測定に関しては、MSの他、HCD-MS2の取得条件などを検討し、至適化した。分析スケールの大規模化に向けては、中性逆相LCで試料の前分画を行うこととし、分離条件を設定した。分画した各試料におけるペプチドの分画の様子を確認し、本研究では5分画でデータ収集することにした。解析ソフトは解析に必要な情報を効率よく収集し、新たな解析パラメーターを設定できるよう改善した。また、これを検証し、正答率を改善するためパラメーターを設定した。上記分析環境を整えつつ、マウス主要組織から糖ペプチドを精製し、各試料について糖鎖付加位置特異的グライコーム分析を開始した。脳、肝、腎、脾、膵、大腸、精巣、肺、胃から試料を調製し、はじめに小規模分析を行い、試料調製の可否を確認した後、中性逆相LCで試料を5分画し、未分画試料と共に大規模分析し、データ収集を開始した。グライコームデータの収集は現在MALDI-MSで行っているが、LC/MSでの収集を視野に入れ、その条件検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に計画した研究項目について実験、解析を進め、特に大きな問題もなく計画に沿って進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
糖鎖付加位置特異的グライコーム分析は、従来多段階MS分析、たとえばCID-MS3やHCD-MS2、ETD-MS2を駆使してようやく可能になる複雑な分析手法であるが、本法は分析感度の著しい低下を引き起こす多段階分析に依存せず、精密分析を主体として同定する新手法であり、その正当性を慎重に確認しなければならない。今後はまず、LC/MS分析によって取得した多数(1分析約3000スキャン)のMSスペクトルから、各シグナル(1スキャン、約150。トータルで450,000シグナル)を収集し、その中から正確なモノアイソトープ質量と強度をピックアップすることや、糖鎖単糖やコアペプチドの計算質量と実測の糖ペプチドの精密質量のマッチングにより推定された結果から、正しい帰属を選別するようなソフトウェアのスコアリングシステムを評価し、改善、およびパラメーターの至適化を継続していく。組織試料の調製法やLC/MS分析の条件はほぼ決定できたので、解析ソフトの改善とパラメーターの至適化ができたら、取得したデータに関して、一斉に解析を進め、データの解釈を進める。解析を進めながら、データ収集の拡充、すなわち、マウスの組織、週齢、性別を拡大して、分析を進める。さらに、微小試料の分析法を改善して、組織局所ごとのデータ収集が可能になるようにする。得られたデータは、論文発表の後、データベース構築プロジェクト研究者に提供し、公開に向け協力していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ソフトウェア開発に計画より多額の費用が発生しそうであったため、分析やデータ解析を担当してもらう研究補助員の雇用を取りやめた。しかし、ソフトウェアの開発に無償で協力してくれる方が現れたため、ソフト開発に充てようとした予算の一部が余剰した。
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次年度使用額の使用計画 |
ソフト開発が一段落したので、次年度には、マウス組織からのデータ取得、拡充を積極的に進めていく。そのための分析やデータ解析を補助してもらう研究補助員の雇用に充てる。
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