研究実績の概要 |
植物は, 「二次的小分子RNA生成機構」によりRNAサイレンシング複合体であるRISCの標的RNAから小分子RNAを作り出す. この機構は「RISCによる標的RNAの認識と切断」「RDR6による相補鎖合成」「DCL4による二本鎖RNAのプロセシング」の3つの反応モジュールが連動することで機能すると考えられている. これまで各モジュールを対象とした解析は進められてきたが, モジュール間の連動機構は未知である. 本研究は多因子・多段階反応である二次的小分子生成機構を試験管内で再構成し, 反応モジュール間の連動機構を生化学的, 生物物理学的に解析することで, 二次的小分子生成機構の最重要反応であるRDR6の鋳型選択機構を明らかとする. 平成27年度から平成28年度にかけて,RDR6はmRNAの末端にあるポリA鎖をチェックすることで正常なmRNAであると判断し二本鎖化を見逃す一方で、ポリA鎖を持たないRNAは二本鎖化しPTGSに導くという特殊な性質をもつことを明らかにし, Nature plants誌に論文として発表した. 平成28年度は連携研究者である多田隈博士および所属研究室の大学院生とともにRDR6の鋳型選択機構を全反射照明蛍光顕微鏡観察を通して一分子レベルで解析した. 具体的にはガラス基盤に3´末端にポリAをもつRNAまたはポリAを持たないRNAを固定し, 蛍光標識したRDR6を加え結合頻度および結合の長さを調べた.しかしながら野生型RDR6はガラス基板上でアグリゲーションを形成することが発覚したため, アグリゲーションを起こしやすいドメインを欠いた変異型RDR6を作製した. また平成28年度は「RISCによる標的RNAの認識と切断」および「RDR6による相補鎖合成」モジュールに関わる因子を発現, 精製した.
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今後の研究の推進方策 |
RDR6の鋳型選択機構の一旦は明らかに出来たが, (1)どのようなメカニズムでポリA鎖を嫌うのかが未知, であることと (2)RISCによる認識・切断モジュールが相補鎖合成モジュールに与える影響などが未知, であるため事業期間を延長してこれらの問題に取り組む. (1)に関しては具体的にはフィルターバインディングアッセイやゲルシフトアッセイなどの生化学的手法を用いてRDR6とポリAをもつRNAとの親和性を調べる.またガラス基板上でRDR6がアグリゲーションを形成してしまう問題を解決し一分子イメージングを再度行う(2)に関しては植物細胞抽出液も使いながらRISCの切断がRDR6による相補鎖合成活性に影響を与えるか否かを調べ, 可能であれば一分子イメージングを用いて相補鎖合成モジュールどの素過程がモジュール間連動によって影響を受けるかを解析する.
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