これまでの研究で、RDR6はポリA鎖を欠いた異常なRNAを特異的に二本鎖化することを発見し、論文として報告した。 平成29年度はポリA鎖を嫌うメカニズムを解析した。また、RISCによる認識・切断モジュールが相補鎖合成モジュールに与える影響も解析した。 RDR6には、アミノ末端にRNA結合ドメインとして知られているRRMドメインが、カルボキシ末端にRdRPドメインが存在する。RRMドメインが鋳型特異性に必要かを調べるため、RRMドメイン欠失変異体を作製し、相補鎖合成実験を行ったところ、変異体も、野生型と同様の相補鎖合成活性を持つと共に、ポリA鎖を嫌う特徴も保持していた。以上のことからRdRPドメインにポリA鎖を嫌う機能が存在することが示された。次にRdRPドメインと鋳型RNAとの結合親和性を解析した。その結果、ポリA鎖の有無は鋳型RNAとRDR6との結合に影響を与えないことが明らかになった。これらの結果より、RDR6は単純な結合親和性の違いで鋳型選択をしているわけではなく、相補鎖合成の開始段階で選択していることが示唆された。 RISCによる認識・切断モジュールが相補鎖合成モジュールに与える影響を調べるため、タバコ抽出液内でRDR6による相補鎖合成を解析する実験系の開発を行った。その結果RDR6による相補鎖合成は、RISCによる認識・切断モジュールに加えて、SDE5というImportin様タンパク質を加えることが必須であることが明らかになった。この結果、様々な反応阻害因子が存在する環境では、RDR6のみでは鋳型RNAを効率よく相補鎖合成できず、RISCによる標的認識とSDE5という補助因子がRDR6を含む相補鎖合成モジュールの活性化に必須であることが明らかになった。
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