研究課題/領域番号 |
15K14445
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
名黒 功 東京大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (80401222)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん転移 / ASK1 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
本年度は計画の通り、ASK1ノックアウトマウスで観察される肺のがん転移の減弱の原因として、どの組織/細胞のASK1が関与しているかについてコンディショナルノックアウトマウスを作成して検討した。その結果特定の組織だけのASK1欠損によってもがん転移が抑制されることが明らかになった。また、当初予想したとおり、複数の組織において特異的ASK1ノックアウトががん転移の減弱を示したことから、ASK1はがん転移において複数の場で機能する分子であることが明らかになり、がん転移という現象を理解する上で重要な分子であることが示唆された。コンディショナルノックアウトマウスの結果から注目すべき組織を特定できたため、その組織でのASK1の働きを検討したところ、その組織で重要な機能を持つことが知られていたある受容体のリン酸化状態がASK1欠損により大きく変化することを突き止めた。この受容体のノックアウトマウスがASK1ノックアウトマウスと同様の表現型を示すことから、ASK1はこの受容体の機能に必要であることが示唆される。 本年度実施する予定であったもう一つの項目として、がんの肺転移を引き起こしたたWTとASK1ノックアウトマウスの肺からmRNAを抽出し、マイクロアレイ解析により発現遺伝子の差を検討する実験も行った。得られた結果に対して、real time PCR法による再現性の検証を行い、実施したマイクロアレイ解析が妥当なものであることを確認できた。現在、この結果についてバイオインフォマティクスを利用したオントロジー解析やパスウェイ解析などを行っており、今後ASK1ノックアウトマウスで特異的に発現が変化していた遺伝子について解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、本年度はコンディショナルノックアウトマウスなどを用いて、がん転移においてASK1が働く”場”を決めることを主眼に置いていたが、実際にどの組織においてASK1が重要な働きをしているか突き止めることができたことに加えて、「研究実績の概要」で書いたとおり、ASK1が特定の組織において、受容体のリン酸化状態を制御しているという知見も得られている。これは、次年度に計画していたASK1がどのようなシグナル伝達を介してがん転移を制御するかという分子レベルの問題に取り組む上で大きな手がかりになるものである。 また、がん転移モデルマウスの肺に対するマイクロアレイ解析も順調に実施しており、解析の妥当性の検証も済ませ、既に具体的な解析に進んでいる。これらの状況を考慮すると、本研究は当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
順調に研究が進んでいるため、当初の計画どおりに研究を推進する。具体的には、本年度で見いだした受容体のリン酸化がASK1を介するどのようなシグナル伝達で影響を受けているのか、既にASK1が制御することが分かっているMAPKなどを中心に分子メカニズムを明らかにしていく。また、別の組織でもASK1が働くことが分かったため、こちらの組織におけるASK1が制御する細胞応答を解析し、ASK1の制御するターゲット分子の探索も併せて行う。この際、マイクロアレイ解析で得られた遺伝子発現情報を活用することで、効率的な解析が可能になると考えている。最終的には、複数の”場”でがん転移の制御に関与するASK1について、その役割を分子レベルのシグナル伝達から理解すると共に、ASK1阻害剤を実際にがん転移抑制の薬として用いることができるかについて検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施予定であったELISAなどに必要な経費があったが、実験の結果を受けてELISAは来年度に実施する方が効率的に研究を進められると考えられた。一方で、本年度の進捗状況を踏まえて、次年度に動物実験、ELISAなどに必要な経費が相当額かかると想定されたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画していた所要額に加えて、本年度を上回る規模でASK1ノックアウトマウスをはじめとした動物実験に配分する費用が必要になる。また、実施したマイクロアレイ解析の結果をうけて、サイトカイン等のELISAの解析、遺伝子発現解析などに費用が必要になる予定である。
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