研究課題/領域番号 |
15K14450
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
升方 久夫 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00199689)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分裂酵母 / 複製開始点 / LacI-GFP / テロメア |
研究実績の概要 |
【1】間期染色体の核内局在制御機構の解明 分裂酵母を用いて間期染色体の核内局在を制御するしくみを明らかにするため、染色体上に広範囲に分布する機能領域である複製開始点を生細胞内で可視化するシステムを構築した。異なる制御を受けることが明らかになっている複製開始点の近傍にlac0リピートを組み込み、発現させたLacI-GFPのシグナルを高解像度顕微鏡で解析した。核膜とテロメアとの相対位置をそれぞれIsh1-mCherry とTaz1-mCherryで検出し、統計的解析を行った。テロメア因子Taz1-Rif1に制御される後期開始点は細胞周期を通じて核膜内縁に局在し、さらにG1-S期にテロメアに隣接を示したのに対し、Rif1のみにより制御される後期開始点や初期開始点は核内のランダムな局在を示した。染色体の同じ腕部にある後期開始点同士の隣接が検出された。Taz1-Rif1で制御される後期開始点の特異的局在は、タイミング制御に必要な「開始点に隣接するテロメア様配列」と、Taz1, Rif1に依存し、時間的空間的制御がともにテロメア因子により制御されることが示唆された。 【2】核内局在に関与する因子の機能解析 後期複製開始点の核内局在に関わるRif1の機能ドメインとして、PP1(タンパク質フォスファターゼ1)結合モチーフ欠損株を作成した結果、染色体内部の後期複製開始点の核膜への局在とテロメア隣接が損なわれたことから、PP1が染色体の核内局在に関与する可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
染色体内部の複数の複製開始点をlacO-LacI-GFP系で可視化することに成功し、統計的解析を経て、複製開始点の制御と核内局在が密接に関わること、さらにその制御にテロメア結合因子が関与することを示すことができた(投稿準備中)。染色体上の2個所を同時に可視化するシステムの構築は酵母株の作成を進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)後期複製開始点のテロメアへの隣接に関して、特定の腕部テロメアに隣接するかどうかを明らかにするため、第2染色体右腕テロメアの近傍ならびに第1染色体右腕テロメア近傍にtet0配列を挿入し、TetR-mCherryと複製開始点(GFP-LacI)の局在を解析する。 (2)後期複製開始点の核膜ならびにテロメアへの隣接機構を明らかにするため、核膜内膜の結合因子であるLem2, Man1, Bqt4の欠損株(ならびに二重変異株)を作成し、後期開始点の局在への影響を解析する。 (3)後期開始点の核膜ならびにテロメアへの隣接機構にShelterin構成因子が関与する可能性を明らかにするため、Rap1ならびにPoz1欠損株を用いて核内局在を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行都合上、種々の酵母株作成を先に行ったため、解析に必要な抗体や試薬の使用を翌年度に廻したため使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
作成した酵母株を用いて細胞内タンパク質の発現ならびに複製開始タイミングの解析を行い、さらに核内局在への影響を解析するための試薬類を購入し使用する。
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