研究課題
【1】間期染色体の核内局在制御機構の解明分裂酵母を用いて間期染色体の核内局在を制御するしくみを明らかにするため、染色体上に多数存在する機能領域として複製開始点を選び、生細胞内で可視化するシステムを構築した。複製開始点の近傍に組み込んだlac0リピートへのLacI-GFP結合シグナルを高解像度顕微鏡で解析した結果、複製開始点のタイミング制御特異的核内局在を検出した。初期開始点は核内にランダムに存在したのに対し、Taz1依存的に制御される後期複製開始点は、細胞周期を通じて核膜内縁に局在しさらにG1-S期にテロメアに隣接を示した。いっぽう、Taz1に依存しない後期開始点は上記の特異的局在を示さなかった。また、Taz1依存的開始点の特異的局在は、「開始点に隣接するテロメア様配列」と、Taz1, Rif1、さらにShelterin構成因子Rap1, Poz1に依存し、テロメアの核膜局在に必要なBqt4には依存しなかった。これらの結果から、テロメア因子が複製開始点の特定グループの時間的空間的制御に関与することが示された。【2】核内局在におけるRif1の機能解析後期複製開始点の核内局在に関わるRif1の機能ドメインとして、PP1(タンパク質フォスファターゼ1)結合モチーフの他に、Taz1結合領域とRif1-Rif1相互作用領域を同定し、これらが複製タイミング制御に関わることを示した。
2: おおむね順調に進展している
染色体内部の複数の複製開始点をlacO-LacI-GFP系で可視化することに成功し、統計的解析を経て、複製開始点の核内局在制御にテロメア結合因子が関与することを示すことができた(投稿準備中)。複製開始点の核膜局在とテロメアへの隣接が複製タイミングを制御する可能性を証明する実験系の作成途中でありまだ結果を得ていない。人為的に染色体内部の局在を制御するしくみは方法論が確立していないため、様々のシステムを構築中である。
(1)核内の染色体ドメイン構造が後期複製開始点のテロメアへの隣接に関係するかどうかを調べるため、第2染色体右腕テロメアの近傍ならびに第1染色体右腕テロメア近傍にtet0配列を挿入しTetR-mCherryで可視化し、それぞれ腕部複製開始点がどのテロメアに隣接するか決まっているのかどうかを明らかにする。(2)テロメアへの隣接が複製タイミングを制御することを証明するため、腕部複製開始点をテロメアの近傍に挿入したtet0配列にtetherし、核内局在と複製タイミングを解析する。2量体形成可能なlacO-LacI-GFP-TetRタンパク質を発現させ、複製開始点近傍のlacO配列とテロメア近傍のtetO配列への結合を誘導する実験系を構築する。(3)Shelterin構成因子、ならびにRif1がどのようなしくみで核内局在に関わるのかを明らかにするため、機能欠損変異体ならびに人為的融合タンパク質を作成し解析する。
論文投稿準備中
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
eLIFE
巻: 12;5 ページ: e15155
10.7554/eLife.15155
Nucleic Acids Research
巻: 44 (22) ページ: 10744-10757
10.1093/nar/gkw874
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/masukata/