研究課題
生殖細胞は次世代を生む特別な細胞であり、その増殖・分化機構の解明は生命科学の最重要課題の一つである。生殖細胞の増殖・分化過程における転写制御や翻訳制御の重要性は、これまでの研究から明らかになっている。申請者は、生殖細胞の増殖・分化過程においてスプライシング制御も重要であると新たに着想し、これを制御するリン酸化酵素SPK-1に着目した結果、その重要性を示す知見を得た。これに基づいて、本研究では線虫C. elegansの生殖腺発達過程をモデルに生殖細胞の増殖・分化過程に働くスプライシング制御を包括的に明らかにするとともに、増殖開始シグナルとスプライシング制御をつなぐ未知の経路を解明することにより、生殖細胞の増殖・分化機構の理解に新たな概念を加えることを目指している。平成28年度は、SPK-1によってリン酸化されるSRタンパク質の中で、生殖細胞の増殖分化過程に関与するものを同定するためにRNAi法によって個々または組合せでSRタンパク質を阻害し、その表現型を調べた。その結果、予想に反してSPK-1阻害時の表現型と一致するものは見出すことができなかったことから、SPK-1はSRタンパク質以外の標的分子を通じて生殖細胞の増殖分化制御を制御している可能性が示唆された。また、SPK-1阻害によるシナプトネマ複合体因子HIM-3の発現領域拡大は、SPK-1と同時にGLD-1を阻害することによって通常の発現に回復することが明らかになった。この結果は、SPK-1が生殖細胞において有糸分裂と減数分裂の切り替えの制御に深く関与していることを示唆している。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 17 ページ: 1153
10.3390/ijms17081153
Genes to Cells
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