研究課題
共免疫沈降法をベースとして私たちが新たに開発したタンパク質間相互作用解析法(VIPアッセイ;Visible Immunoprecipitation assay)は、GST-抗GFP-nanobodyによる免疫沈降に用いたグルタチオンセファロースビーズに結合している蛍光タンパク質(GFPやRFP)を、蛍光顕微鏡下で直接観察することによって相互作用を検出するものである。この相互作用解析法は斬新で極めて簡便であるが、ビーズを顕微鏡下で観察しなければならないために、アッセイのハイスループット化には向かないという欠点があった。そこで、本研究では、抗GFP-nanobodyをマイクロプレートに直接結合させ、蛍光プレートリーダーを用いて相互作用を検出し、アッセイをハイスループット化するための基礎研究を行った。まず、大腸菌で発現させて調製したGST-抗GFP-nanobodyをマイクロプレートに直接固定化しようと試みたが、感度良く検出できるほどに固定化することはできなかった。そこで、京都工繊大の熊田陽一らが開発したマイクロプレートの素材に直接結合する親和性を有する何種類かのタグをGST-抗GFP-nanobodyに付加して、各種素材のマイクロプレートへの結合効率を調べた。その結果、ポリスチレンに対して高い親和性を示すタグ配列(PSタグ)を付加した抗GFP-nanobodyが、比較的高効率でポリスチレン製マイクロプレートに固定できることが明らかになった。一方、PMMA系アクリル樹脂に対して親和性を示すタグを付加した場合には、PMMAマイクロプレートに対する固定効率はあまり高くないという結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
上記のように、PS親和性タグを付加することによって、GST-抗GFP-nanobodyをポリスチレン製マイクロプレートに比較的高効率で固定することに成功した。PSタグ付きGST-抗GFP-nanobodyは大腸菌で発現させて容易にかつ大量に調製できることから、VIPアッセイをできるだけ安価にハイスループット化するための第一段階をクリアしたと言える。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
次の段階として、PSタグ付きGST-抗GFP-nanobodyを固定化したポリスチレン製マイクロプレートへの非特異的なタンパク質の吸着を抑制するためのバッファーの条件や、ブロッキングの条件について検討する必要がある。その後は、相互作用を調べたいGFP融合タンパク質やRFP融合タンパク質を発現させた細胞の抽出液を添加した時に、相互作用をもっとも効率良く検出することが可能なバッファーなどの条件について検討する必要がある。このような条件を順次確定していくことによって、VIPアッセイのハイスループット化が可能になると考える。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件)
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