研究課題
本研究では、2種類の抗体医薬を含む3種類の抗TNF拮抗タンパク質(アダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト)を用いて研究を行った。それぞれのタンパク質を蛍光色素で標識後、標識前と比べて同程度の親和性を抗原であるTNFに対して保持していることを確認した。まず、臨床で投与した場合と同程度の体内濃度である20nMを中心にPBS中での抗原と抗TNF拮抗タンパク質の相互作用を測定した。その結果、従来は不可能であった20nMという希薄な溶液条件で、抗原との複合体(免疫複合体)形成を確認でき、さらに複数種類の異なる化学量論の複合体特定に成功した。免疫複合体の大きさは、大きい順に、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、であった。さらに、同様の相互作用解析をヒト血清中で実施した。その結果、濃度依存的な複合体形成の観測に成功し、PBSと同様に、免疫複合体の大きさは、大きい順に、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、であることが確認された。次に、免疫複合体の大きさと生物活性との関係を明らかとするため、Fc受容体を細胞表面に発現させた組み替えJurkat細胞を用いて信号伝達測定を行なった。その結果、大きな免疫複合体を形成するタンパク質医薬ほど、Fc受容体を介した信号伝達の程度が大きくなることが確認された。今回、蛍光超遠心分析により、抗体医薬が血清中のタンパク質と物理的に相互作用している可能性が示唆れたことから、血清中で最も存在量が多いアルブミンについて抗体との相互作用の評価を実施した。その結果、アダリムマブなどの抗体医薬とアルブミンは、弱いながらも確実に直接結合することが確認された。以上、本研究により、実際の臨床現場で用いられる血中でのタンパク質医薬濃度に設定した上で、血清中での相互作用を蛍光超遠心分析により定量評価できることが示された。
すべて 2017
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mAbs
巻: 5/6 ページ: 1
https://doi.org/10.1080/19420862.2017.1297909