研究課題/領域番号 |
15K14460
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白石 充典 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00380527)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | Gタンパク質共役型受容体 / 抗原 / タンパク質工学 |
研究実績の概要 |
本年度はまず、新規ヒスタミン受容体について細胞内領域を認識する抗体を取得するための抗原分子の作製を試みた。大量調製系が確立したコンストラクトでは、高発現および受容体の安定化のための変異導入に加えて、細胞内第3ループにチトクロムb562タンパク質(BRIL)を融合している。しかしBRILの抗原性が高くこれに対する抗体が作られやすいため、まず本コンストラクトからBRILを除いたものを作製した。しかしBRILを除くことで発現量が大幅に低下することがわかった。より安定化するための変異導入を試みるも、抗体作製に十分な量のタンパク質を得ることができなかった。 当初は受容体を活性型のコンホメーションに固定する抗体の取得を目標としていたが、上記の結果を受けて、本研究では「細胞外領域」を認識する抗体の取得に方針を転換した。本研究は結晶化が困難なGPCRの結晶化を促進するバインダー抗体の取得を目的としており、細胞外の立体構造を認識する抗体も十分に結晶化を促進する抗体となりうる(実際にすでに例がある)。抗原となる受容体分子は細胞内第3ループにBRILを融合し、C末端にGFPを融合したものを用いた。また抗原粒子の作製においては、ストレプトアビジンではなくGFPに特異的に結合するGFP-trap(R)を固定したビーズを利用することにした。 抗原となる受容体の大量調製において、ゲル濾過で単量体と二量体を分離できないのが問題であった。もし逆平行の二量体を形成していると抗原の向きを揃えることができない。そのため単量体を分離するのが望ましい。今回は界面活性剤を工夫することでゲル濾過における単量体の分離を改善することができた。また単量体は濃縮しても二量体にならないことを確認した。さらにGFP-trapビーズへのGFPを介した結合によりリガンド結合活性を保持したまま固定化できることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では本年度中に抗原粒子の作製と評価を行う予定であったが、抗原となる受容体タンパク質のコンストラクトの作製に手間を要してしまい、本年度末にようやく抗原粒子の作製を行ったところである。しかし取得する抗体を受容体の「細胞外領域」を認識するものに方向転換し、抗原の調製(単量体の分離)もうまくいったため、今後は順調に計画を推進していくことができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は主に新規ヒスタミン受容体の「細胞外領域」を認識する抗体の作製にフォーカスして研究を進める。抗原粒子を作製次第、マウスを用いた免疫を行い、抗原粒子と通常のリポソームに埋め込んだ抗原とで、抗体の作られ方を調べる。また活性化状態(アゴニスト結合状態)を安定に保持する抗体は、受容体の活性化状態を知るために欠かせないため、今後も継続して「細胞内領域」を認識する抗体の取得に向けて方策を立てていく。細胞内領域を認識する抗体を作製するためには、細胞内に何も融合しない受容体タンパク質の大量調製が必要であるが、酵母を用いた系では困難が予想されるため、昆虫細胞発現系などの発現系を用いて試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
抗原となる受容体タンパク質の作製に時間を要してしまい、初年度に抗原粒子を大量に調製する段階まで至らなかったことが理由として挙げられる。
|
次年度使用額の使用計画 |
抗原粒子の評価を加速させるために、マウスへの免疫を専門の受託業者に依頼することを予定している。
|