前年度までの研究において、ヒスタミン受容体の細胞内第3ループにチトクロムb562タンパク質(BRIL)を融合した蛋白質“HR-BRIL”について、出芽酵母を用いた発現から1回の精製で2~3 mgの精製タンパク質を得ることができる系を確立した。今年度はヒスタミン受容体を埋め込んだプロテオリポソームを抗原として抗体の作製を試みた。精製したHR-BRIL、脂質として卵黄由来フォスファチジルコリン、およびアジュバントとしてサルモネラ菌由来Lipid-Aを用いて抗原となるリポソームを作製した。リガンド結合試験により埋め込んだリポソームの約30~40%が活性を有することを確認した。作製したリポソームを自己免疫疾患モデルマウスに免疫したところ、有意な抗体価の上昇が見られたため、当該マウスの脾臓よりハイブリドーマを作製したところ、立体構造を認識しかつ受容体の細胞外領域を認識する可能性の高い抗体クローンを数個得ることができた(モノクローナル抗体作製の工程は京都大学医学研究科分子細胞情報学分野にて行われた)。 またヒスタミン受容体を金属キレートアフィニティービーズに固定化し、その上で受容体を脂質に埋め込んだ“安定化抗原粒子”の作製を行った。また安定化抗原粒子をマウスに免疫して、マウス血清中の抗体の評価を行った。比較対象として、通常のリポソーム作製法で調製したヒスタミン受容体のプロテオリポソームを用いた。加熱後の残存リガンド結合活性を調べることで、安定化抗原粒子とプロテオリポソームの熱安定性を比較したところ、どちらも同等の熱安定性であった。免疫後のマウス血清を比較したところ、安定化抗原粒子のほうが全体の抗体価はやや低かったが、細胞外領域を認識する抗体の割合が高いことを示唆する結果が得られた。受容体をビーズに固定したうえで免疫を行うことの有効性が示された。
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