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2015 年度 実施状況報告書

膜脂質による細胞極性の動作原理の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K14465
研究機関川崎医科大学

研究代表者

松田 純子  川崎医科大学, 医学部, 教授 (60363149)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードスフィンゴ糖脂質 / セラミド骨格 / 構造多様性 / 上皮細胞 / 細胞極性 / 膜輸送
研究実績の概要

スフィンゴ糖脂質(GSL)は親水性の糖鎖部分と疎水性のセラミド骨格からなる生体膜の構成脂質である。セラミド骨格はスフィンゴシン塩基と脂肪酸から構成され、それぞれに構造多様性がある。小腸、腎臓にはスフィンゴシン塩基のC4位に水酸基を持つフィトセラミドセラミド構造が豊富に存在するが、未だその機能は不明である。我々はフィトセラミドの合成に関わる酵素:Dihydroceramide:sphinganine C4-hydroxylase(DES2)遺伝子をノックアウトすることにより、フィトスフィンゴ脂質欠損マウス‐Des2-KOマウス‐を作成し、Des2-KOマウスは出生早期から体重増加不良を呈して2週間前後で死亡すること、小腸上皮細胞および近位尿細管上皮細胞に組織病理学的変化を認めることを明らかにしてきた。本研究では、Des2-KOマウスおよびその培養細胞を用いて、極性細胞である上皮細胞において、膜脂質が担う機能を追究することを目指している。本年度は、Des2-KOマウスの表現型が致死型と軽症型の2つに分かれることから、致死型マウス系統の樹立を行い、その小腸上皮細胞、尿細管上皮細胞、膀胱、脳神経系の病態解析を行った。Des2-KOの小腸では、小腸上皮細胞の頂端膜に局在するGSLが細胞質内にとどまり、膜輸送体タンパク質や分泌タンパク質の頂端膜への局在が失われていた。組織病理学的には小腸上皮細胞の形態変化、封入体の増加、小腸幹細胞死の増加などが認められた。機能的にも生後2週間前後のマウス小腸において活発な脂質の吸収が障害されていた。腎臓では近位尿細管上皮細胞に組織病理学的変化を認め、多くのマウスが水腎症を呈した。加えて致死型と軽症型を分けるmodifier遺伝子を同定すべくマウスゲノムのエクソーム解析を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでフィトセラミド構造の存在が知られていなかった膀胱と脳神経系の表現型解析を行った。Des2-KOの膀胱移行上皮には明らかな組織病理学的変化を認め、膀胱組織由来脂質のLC-MS分析で、野生型マウスの膀胱にはフィトセラミド構造を持つGSLが豊富に存在するのに対し、Des2-KOではそれらが欠損しており、フィトセラミド構造が膀胱移行上皮細胞の機能に必須であることが明らかになった。脳神経系においては、脳海馬体歯状回最内層の神経細胞死と、小脳白質の髄鞘形成不全および軸索変性を認めた。これらの結果はフィトセラミド構造が小腸上皮細胞や近位尿細管上皮細胞に加え、膀胱移行上皮細胞や神経上皮細胞、ミエリン形成細胞においても必須であることを示している。加えて致死型と軽症型それぞれのDes2 KOマウス系統が樹立できたため、それを分けるmodifier遺伝子を同定すべくマウスゲノムのエクソーム解析を行った。

今後の研究の推進方策

今後はエクソーム解析の結果からmodifier遺伝子を特定し、致死型Des2-KOマウス‐およびその培養細胞を用いて、極性細胞である上皮細胞において、膜脂質が担う機能を、膜脂質の非対称性と膜の極性形成、細胞内の選別輸送機構、膜タンパク質との相互作用に焦点を当て、その分子メカニズム解析を進めていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

本研究の鍵となるDihydroceramide:sphinganine C4-hydroxylase(DES2)のノックアウトマウスには表現型が重症型と軽症型の2つに分かれ、modifier遺伝子の存在が強く疑われたため、マウスのエクソーム解析をタカラバイオ株式会社に外注した。解析結果は既に報告されているが、納期契約手続の関連から次年度に当該費用を支払うことになったためである。

次年度使用額の使用計画

上述の通り、本年度の交付額とほぼ同額の支出手続は済んでおり、次年度も申請時の計画通り使用を進めていく予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] The effects of chemically synthesized saposin C on glucosylceramide-beta-glucosidase.2015

    • 著者名/発表者名
      Yoneshige A, Muto M, Watanabe T, Hojo H, Matsuda J.
    • 雑誌名

      Clinical Biochemistry

      巻: 48 ページ: 1177-1180

    • DOI

      doi: 10.1016/j.clinbiochem.2015.06.004. Epub 2015 Jun 9.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] スフィンゴ糖脂質セラミド骨格の構造多様性が担う生物機能の解明.2015

    • 著者名/発表者名
      松田純子、小野公嗣、渡辺 昂、鈴木明身.
    • 学会等名
      第20回日本ライソゾーム 病研究会
    • 発表場所
      東京慈恵会医科大学〈東京都・港区)
    • 年月日
      2015-10-02 – 2015-10-03
  • [学会発表] Central nervous system pathology in the phytosphingolipid-deficient mouse.2015

    • 著者名/発表者名
      Matsuda J, Ono K, Watanabe T, Yoneshige A, Muto M, Suzuki A.
    • 学会等名
      25th Biennial Meeting of the International Society for Neurochemistry.
    • 発表場所
      Cairns, Australia.
    • 年月日
      2015-08-23 – 2015-08-27
    • 国際学会
  • [図書] 糖鎖蓄積症: 新機能開発・応用ハンドブック.-創薬・医療から食品開発まで-.2015

    • 著者名/発表者名
      松田純子
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      株)エヌ・ティ-・エス

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公開日: 2017-01-06  

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