研究実績の概要 |
(1)mRNA上の既知修飾部位におけるシュードウリジル化の定量法の確立 次世代型DNAシークエンサーを利用した近年の研究により、mRNA上の多くのヌクレオチド部位にシュードウリジル化修飾が同定されている(Carlile et al. Nature 515, 143-146 (2014), Schwartz et al. Cell 159, 148-162 (2014))。しかし、これらは間接的な方法であるために、各部位におけるシュードウリジル化率を求め試料間で比較することは困難であった。そこで、培養条件の異なるHEK293細胞より抽出した複数のRNA試料について、従来の方法(Ofengand et al. Methods 25, 365-373 (2001))に従いシュードウリジン特異的にCMC化修飾を施した後、修飾部位を跨ぐ位置に設計したプライマー対を用いた逆転写-リアルタイムPCRによりシュードウリジル化率の定量を試みた。その結果、この方法はあくまでも半定量的解析ではあるものの、試料間の特異的部位におけるシュードウリジル化率の差異を明確に示すことができた。 (2)シュードウリジル化修飾を介した遺伝情報再コード化の解析 ヒトの8種類のmRNAおよびrRNAについて、上記方法により既知の修飾部位におけるシュードウリジル化率の血清飢餓による変動を調査した結果、2種類のmRNA上に報告された部位で比較的大きな修飾率の変動が見出された。すなわち、これらのmRNAにおいては、血清飢餓ストレスに応答したシュードウリジル化修飾の変化が、細胞において何らかの生理的変化を導いている可能性がある。そこで現在、これらのmRNAにおけるシュードウリジル化がコードするアミノ酸配列に及ぼす影響の解析を進めている。
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