研究課題/領域番号 |
15K14468
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
加藤 龍一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (50240833)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | POMT1 / POMT2 / ジストログリカン / 筋ジストロフィー / 膜タンパク質 / 結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
先天性筋ジストロフィー症は、細胞外基質の構成タンパク質であるα-ジストログリカンの糖鎖修飾異常がその原因である。α-ジストログリカン上の糖鎖を介して、ラミニン(laminin)などに代表される細胞外基底膜に存在するタンパク質群と相互作用をする。すなわち、α-ジストログリカンの糖鎖修飾異常により、α-ジストログリカンと細胞外基底膜に存在するタンパク質群との相互作用が破綻する結果、筋繊維細胞などが異常を起こし、先天性筋ジストロフィー症を発症する。このα-ジストログリカンの糖鎖の最初のマンノースを付加する酵素としてPOMT1-POMT2が同定されたが、膜タンパク質複合体であることの困難さからその立体構造は決定されていない。 このPOMT1-POMT2複合体の立体構造解析を進めるために、哺乳類細胞を用いてその発現系を確立し、界面活性剤や脂質の検討を行い、POMT1-POMT2複合体の結晶化が可能になる精製法の確立を目指して研究を進めている。POMT1-POMT2複合体の精製に成功すれば、その結晶化を行い、硫黄原子の異常分散効果を利用する位相決定法(S-SAD法)を用いて立体構造解析を行う予定で研究を進めている。 本年度は、POMT1, POMT2 それぞれについて発現用プラスミドの作成を行った。GFP融合タンパク質として発現確認実験を行ったが、発現量が非常に少ないことが分かった。また、これと平行して、結晶化スクリーニングを進めた際に必要となる結晶評価のため、スクリーニング用の結晶化プレートのまま回折能がチェックできるシステムの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
POMT1, POMT2 についてGFP融合タンパク質の形での発現コンストラクトの作成を行い、それを用いて発現実験を行った。しかしながら両者とも発現量が非常に少なく、そのままでは結晶化スクリーニング実験を行うのに十分なタンパク質が得られない量であった。そこで、発現条件の検討を行うと共にコンストラクトの見直しにも着手した。 十分な量のサンプルが得られた場合、結晶化スクリーニングを行い、結晶の回折能の測定を行う予定である。そこで、スクリーニング用の結晶化プレートのまま放射光ビームラインで回折能を測定する装置の開発を行い、そのテスト実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
発現条件およびコンストラクトの見直しを行い、発現量の改善を図る。その際、変異を導入して安定化タンパク質の創出を試みる。安定なサンプルが一定量以上得られる条件が見出されれば、結晶化スクリーニングを行い、結晶が得られれば放射光X線を照射して回折能の測定、回折データセットの収集、構造解析と進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
大量発現実験を実施するコンストラクトの作成に成功していないので、発現用の試薬等を大量に使用することがなかったため、研究費に余裕が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
複数の発現コンストラクトの作成を行い、その発現実験を実施するに際し、研究費を使用する計画である。
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