研究課題
力学的刺激に対する細胞応答は生体の恒常性維持、胚発生、器官形成、組織再生において重要な役割を担っている。Rhoファミリー分子群によるアクチン骨格再構築はこれらの過程に必須である。細胞の力覚応答におけるRhoファミリーの時空間的な活性制御は活性化因子であるRho-GEFに依存しているが、力覚応答におけるRho-GEFの活性化機構は全く不明である。私達は、最近、血管内皮細胞の繰返し伸展刺激による細胞配向の変化をモデル系として用いて、力覚応答に関与するRho-GEFの網羅的探索を行い、11種類のRho-GEFを同定することに成功した。本研究では、これらの分子の中で、RhoAのGEFであるSoloに焦点を当てて、力学的刺激によるSoloの活性化機構と、細胞の力覚応答、集団移動、組織構築におけるSoloの機能の解明を目的としている。本年度は、Solo結合蛋白質をプロテオミクス解析し、中間径フィラメントを形成するケラチン8/18を同定し、Soloはケラチン繊維と複数箇所で結合することを見出した。Soloを上皮細胞に過剰発現させると、太いストレスファイバーと太いケラチン繊維の形成が促進された。また、Soloの発現抑制はストレスファイバーの消失とケラチン繊維の不規則な分布を引き起こした。さらに、SoloのGEFドメインの変異体や各種欠失変異体の発現やSoloやケラチン18の発現抑制は引張刺激依存的なRhoAの活性化とストレスファイバー形成を抑制した。以上の結果から、Soloはケラチン繊維と複数部位で相互作用することにより、メカニカルストレス依存的なRhoAの活性化に関与し、力学的刺激依存的なアクチン繊維とケラチン繊維の形成・強化に重要な役割をもつことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、力覚応答に関与するRho-GEFとして私達が同定したSoloに着目し、力学的刺激による細胞骨格再構築、ならびに細胞の集団移動、3次元組織構築におけるSoloの機能を解明することを目的としている。本年度は、Solo結合蛋白質をプロテオミクス解析し、中間径フィラメントを形成するケラチン8/18を同定し、Soloはケラチン繊維と複数箇所で結合することを見出した。Soloを過剰発現するとストレスファイバーとケラチン繊維の形成が促進され、発現抑制するとストレスファイバーの消失とケラチン繊維の不規則な分布が引き起こされることを見出した。さらに、Soloの変異体の発現やSoloやケラチン18の発現抑制は引張刺激依存的なRhoAの活性化とストレスファイバー形成を抑制することも見出した。これらの結果は、力学的刺激依存的なアクチン繊維とケラチン繊維の形成・強化においてSoloが重要な役割をもつことを示しており、おおむね順調に進展していると判断した。
本研究では、力覚応答に関与するRho-GEFとして私達が同定したSoloについて、力学的刺激による細胞骨格再構築、ならびに細胞の集団移動、3次元組織構築における機能を解明することを目的としている。H27年度は、Soloが引張刺激によるアクチンストレスファイバーの形成・強化に関与する事を明らかにしたので、今後は、細胞の集団移動、3次元組織構築におけるSoloの機能を解明する。そのため、細胞の集団移動や嚢胞形成、管腔形成におけるSoloの発現抑制の効果を解析する。また、Solo分子自身がメカノセンサー分子として機能するかどうかをインビトロ伸展実験により検証する。本研究により、細胞の力覚応答の新たな分子機構を解明し、細胞の集団移動や3次元組織構築における力覚応答のシグナル伝達機構を解明する。
今年度は、引張刺激実験系の確立と顕微鏡観察を主に行ったが、これらの実験は既存の設備で行うことができた。H28年度は3次元培養系を用いた実験やインビトロ伸展実験などで物品費が多くかかると思われることから、次年度使用額が生じた。
H28年度は、細胞の集団移動の観察や3次元培養系を用いた管腔形成の観察実験や、インビトロ伸展実験を行う予定であり、細胞培養や生化学実験に必要な試薬を購入するため、物品費として使用する計画である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/mizuno_lab/