研究実績の概要 |
「研究の目的」,「研究実施計画」に沿って幾つかの興味ある知見が得られた.具体的には,「Ⅰ.哺乳類ホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼC(PC-PLC)の分子実体の解明」について以下の結果が得られた. ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)δをpleckstrin-homology domain (PH), C1 domain (C1), 介在領域を含めたcatalytic domain (CD), 2つのcoiled-coil structureを含む領域 (CC), sterile α motif domain (SAM) の5つに分け,マウス脳破砕物を用いてPC-PLC活性沈降能の強さを解析した.PC-PLC活性はCCによる沈降物が最も高く, 対照と比較して有意な差があり, 約7倍の活性を示した. 一方, 他の変異体(PH, C1, CD, SAM)では沈降したPC-PLC活性が低く, 対照と有意な差は認められなかった.そして今後,DGKδ-CC との相互作用を利用してPC-PLCの分子実体の解明を目指す. また,従来のPC-PLC活性測定法では,バックグラウンド活性が高く,弱いPC-PLC活性を定量性良く測定することが困難であった.そこで,液体クロマトグラフィー/質量分析を用いた,感度が高く定量性の良い測定法を確立した(Anal. Biochem. 2017).すなわちち,本法は従来法に比べ,低いバックグラウンド活性 (0.02% 対 91%), 高いシグナル/ノイズ比 (7294 対 4.4), 高い感度(32倍以上),低い定量限界 (0.04 pmol 対 0.69 pmol of PC-PLC)を持っていた.
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