全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患では特定の蛋白質部位に対する自己抗体を産出する。リボソームは多くの蛋白質成分とrRNAより構成されているが、SLEの主な自己免疫標的は大サブユニットのP蛋白質に限定されている。P蛋白質は人の場合、進化的に保存された共通の配列を有するP0、P1、P2より成り、リボソーム上で安定な複合体を形成する。そして、これら蛋白質の一部位が自己免疫の標的になる。研究代表者らの事前の解析により、①ヒトP蛋白質でマウスを免疫化した場合、患者の自己抗体と同様にP蛋白質の一部に対する抗体が高効率で産出されること;②ヒトのP蛋白質のその部位は運動性・柔軟性を保持すること;③古細菌のP蛋白質相同体もヒトとほぼ類似の構造的性質を保有し、この蛋白質の動物への投与によりヒト蛋白質の相同部位に対する抗体が産出されること、が明らかにされた。これらの結果から、P蛋白質のユニークな構造と動的性質がその特定部位に抗原性を誘発させていると推察し、本研究ではその仮説を立証し、新規抗体作製系を確立すること、を主要な目的とした。平成27~28年度の研究を通して、調製が容易な生物種のaP1を材料として、その一部のアミノ酸配列を、別なリボソーム蛋白質S6の一部の配列と置換し、これを複数のウサギに免疫することで、その置換したS6の配列に対する抗体の産出が確認された。同様の方法により、平成27年度は翻訳因子の一種であるHbs1、平成28年度はRNA干渉に関わるハエと蚕由来のZucchini(Zuc)に対する抗体を産出することに成功した。さらに、得られた抗体とnative型サンプルとの反応性を確認することは重要であり、平成28年度は抗S6抗体とラット由来のリボソーム粒子との結合性を確認し、得られた抗体がnative型S6と反応する有効な抗体であることが確認された。
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