研究課題
ユビキチン・プロテアソーム系において、E3リガーゼは特異的な基質と結合してユビキチンを付加する役割を担っている。出芽酵母には数十種類のE3リガーゼがあるが、多くのE3リガーゼについては特異的な基質が未同定であるため、生理機能も明らかでない。ユビキチン・プロテアソーム系による生命現象の制御を明らかにするためには、個々のE3リガーゼの基質を同定して、ユビキチン化の制御機構や分解の生理的意義を調べる必要がある。従来の基質探索では、E3リガーゼと結合するタンパク質をtwo hybrid法や質量分析などによって選び出し、膨大なリストの中から偽陽性を排除して、分解基質を絞り込む方法が採られてきた。しかしながら、結合を指標としたE3リガーゼ側からの基質探索は、必ずしも容易ではないことが明らかになりつつある。たとえば、分解基質の選別はE3リガーゼと基質の結合の強弱だけでなく、ユビキチン鎖の伸長、脱ユビキチン化、プロテアソームへの標的化ステップなど、多段階で制御されている。また、E3リガーゼと基質の相互作用が微弱で一過的であることも、結合を指標にした分解基質の探索を困難にしている。そこで本研究では、全く逆のアプローチとして、「基質側からの探索システム」を構築することを目的としている。そして現在、データベースから短寿命タンパク質を選び出し、改変型SGA(Synthetic Genetic Array)法を駆使して、その分解を担うE3リガーゼの同定を進めている最中である。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、SGA法を用いて複数の新たなE3と基質の関係を明らかにしており、その生理学的意義の解析を進めていることより、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
平成27年度までと同様に、短寿命タンパク質の分解のプロテアソーム依存性を検定して、改変型SGA法によるE3リガーゼの同定を行う。同定したE3リガーゼと分解基質について、免疫沈降およびpull downアッセイによる相互作用の解析、シクロヘキシミドチェイスおよびパルスチェイス法による分解のアッセイ、in vitroユビキチン化反応などを行う。さらに、分解制御機構(フィードバック・フィードフォワード制御など)、E3リガーゼおよび分解基質の転写・翻訳レベルの発現調節機構、遺伝学的相互作用などの解析によって、ユビキチン化の制御や分解の生理的意義を調べる。
次年度使用額は9331円と少額であり、平成27年度は予定とおり研究は進んでいる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://bunshi4.bio.nagoya-u.ac.jp/~2kamura/index.html