研究課題
ユビキチン・プロテアソーム系の多彩な生理機能を明らかにするためには、個々のE3リガーゼに対応する特異的な分解基質の同定が不可欠である。従来はE3リガーゼに結合するタンパク質の中から分解基質を絞り込む、「E3リガーゼ側からの探索」が行われてきた。本研究では全く逆のアプローチとして、「基質側からE3リガーゼを探索」するシステムを構築した。出芽酵母のタンパク質半減期データベースから、機能的に重要な短寿命タンパク質Spo12を選択した。細胞周期の進行はCDKやCKIなどの多くの因子により厳密に制御されている。脱リン酸化酵素Cdc14は通常核小体に局在しているが、M期後期になると核や細胞質に局在を変えて CDKなどを不活性化し、M期からの脱出を促進する。Cdc14の局在変化にはFEAR(Cdc fourteen early anaphase release)とMEN(Mitotic exit network)という2つのネットワークが関与している。Spo12はEsp1、Slk19、Cdc5とともにFEARネットワークを形成している。Spo12の発現量はM期初期に急速に増大し、M期後期において118番目と125番目のセリンがリン酸化されることによって活性化される。また、Spo12はCdc14によって脱リン酸化を受けて不活性化されると考えられている。本研究ではFEARネットワークにおけるSpo12の活性制御に、ユビキチン・プロテアソーム系による分解が関わっている可能性を検討した。その結果、FEARネットワークの構成因子であるSpo12がHect型E3であるp340によって分解が制御されているが、この分解にはSpo12のリン酸化は関与していないことを明らかにした。さらにはp340によるSpo12の分解制御が細胞周期進行や細胞増殖に関与していることを示した。この発見はFEARネットワークの活性制御機構を知るうえで重要な知見である。
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Journal of Cell Biology
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http://bunshi4.bio.nagoya-u.ac.jp/~2kamura/index.html