研究課題
研究の目的は、「糖鎖」と「レドックス」という細胞が持つ一見独立した2つのシステムが密接に制御し合う協調システムを新たに見出し、"Glyco-Redox"制御異常を背景とする様々な疾患の病因解明と治療法探索につながる新しい知見を得ることである。平成30年度は、昨年度までの成果を発展させ、抗酸化酵素であるSOD3の糖鎖解析を中心に行なった。糖鎖構造の異なるSOD3を細胞株より精製し、あるいは発現させることで、これまでに知られているがん抑制効果がどのように変化するのか検証している。これまでのところ、複合型糖鎖を欠損するSOD3は通常のSOD3とは異なる作用を示すことがわかっており、SOD3は糖鎖構造の違いでその機能を変化させ、がんなどの疾病の進展に関与する可能性が考えられた。現在その詳細なメカニズム解析を行なっている。さらに、がん患者においてSOD3の糖鎖構造がどのように変化しているのかを明らかにするため、日本医科大学との共同研究を実施している。また、過酸化水素によって実験的に酸化ストレスを惹起したマクロファージでは、糖鎖合成酵素の発現が変化していることを見出した。中でもN型糖鎖の分岐構造の合成酵素が変動しており、その結果、異物貪食能が亢進することを見出した。また酸化ストレス未刺激においても、N型糖鎖の合成酵素の発現を高めるだけで、同様の貪食能亢進を確認した。以上の結果は、生体が酸化ストレスを受けた時、糖鎖構造を変化させることで異物排除能を高める可能性を強く示唆するものであり、Glyco-redoxシステムの一端であると考えられる。現在この成果は論文としてまとめつつある。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 4件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
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