研究実績の概要 |
ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase:以下TERT)の意義は、S期特異的に合成される逆転写酵素複合体によるテロメア長維持にあると考えられてきたが、我々のグループは、TERTがテロメア構造維持以外の生理機能を持つこと(Cell 2003, Masutomi et al., PNAS 2005, Masutomi et al. )、および、逆転写酵活性以外にRNA dependent RNA Polymerase (RdRP)活性を有することを報告し (Nature 2009, Maida et al.)、さらには、M期特異的に合成されるTERT-RdRP活性によるヘテロクロマチン状態の制御に関わることを報告してきた(PNAS 2011, Okamoto et al., MCB 2014, Maida et al.)。また、M期にセントロメア、紡錘糸およびmidbody(MCB 2014, Maida et al.)に存在することも見出してきた。TERTが、S期特異的に合成される逆転写酵素複合体とは異なる複合体により、細胞周期の異なる時期(M期)に、異なる酵素活性(RdRP活性)でテロメアとは異なる染色体ヘテロクロマチン領域(セントロメア領域など)を制御していることに注目し、「M期特異的に形成されるTERT-RdRP活性を保証するTERTリン酸化の分子基盤解明」を目指し研究を進めた。 本年度は、hTERTはM期特異的にリン酸化され、M期特異的リン酸化がhTERT-RdRP活性には必須であることを確認した。一方で、従来から知られているhTERTの逆転写酵素活性にはリン酸化は関与しないことも確認した。さらに、リン酸化部位の同定のために、M期に同調した細胞(HeLa細胞、293T細胞など)を用いて網羅的にタンパク質質量分析解析(MASS解析)にによりTERT由来リン酸化ペプチドの同定を試み、リン酸化ペプチドを検出しリン酸化部位を同定した。また、同定した4箇所のリン酸化部位を含むペプチドを抗原として、リン酸化部位特異的抗体の作製を行った。これらの抗体はリン酸化TERTを検出することを確認した。
|