研究実績の概要 |
細胞内では生体高分子の合成・分解が常に起きており、生体高分子の合成だけでなく分解も恒常性の維持には必須である。細胞内分解システムとしては、ユビキチン・プロテアソーム系とマクローオートファジーが有名であるが、まだ未知の経路も存在すると推測され、不明な点も多い。細胞内分解システムのうち、chaperone-mediated autophagy (CMA)は、リソソームが直接的に蛋白質を取り込み分解する経路である。一方、研究代表者はリソソームが直接的にRNA/DNAを取り込み分解する経路を見いだし、これをRNautophagy/DNautophagy (RDA)と名付けて報告している。CMAにおいては、リソソーム膜蛋白質LAMP2Aが受容体として機能すると報告されている。また、研究代表者はLAMP2Cが核酸結合能を有しており、核酸受容体として機能することを報告してきた。LAMP2のスプライスバリアントには、LAMP2A, LAMP2Cの他にLAMP2Bがあることが知られているが、その機能は不明であった。本研究では、LAMP2Bが未知のオートファジー経路に関与しているという仮説のもと、昨年度までLAMP2Bに結合する細胞内物質の探索を行い、その結果結合する細胞内物質を新たに同定した。さらに、この結合を介して、リソソームが特定の細胞内物質を分解するという新規細胞内分解経路を見いだした。今年度は、マウス個体を用いた実験を遂行するとともに、この新規経路の分子メカニズムについて論文投稿に必要なデータの取得を行った。今後は、必要なデータがそろい次第、新規細胞内分解経路に関しての論文を投稿する予定である。
|