研究課題/領域番号 |
15K14484
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小泉 晴比古 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10451626)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 交流電場印加 / タンパク質結晶 / 結晶の完全性 / ラマン散乱測定 |
研究実績の概要 |
高齢化社会に対応できるゲノム創薬やテーラーメイド医療を実現させるためには、精密なタンパク質分子の三次元構造の情報が必須である。そのタンパク質分子の三次元構造は、主に、タンパク質単結晶を用いてX線構造解析を行うことにより得ることができるが、その結果をゲノム創薬やテーラーメイド医療につなげるためには、少なくとも1.5 オングストローム以下の分解能で構造を精密化することのできる高品質なタンパク質単結晶が必要となる。しかしながら、そのような高分解能を得ることのできるタンパク質単結晶は非常に育成が難しい。 近年、申請者は、1 MHzの交流電場を印加しながら正方晶リゾチームを育成することにより、その結晶の完全性の改善に成功した(J. Appl. Cryst. 46, 25 (2013).)。そして、1 MHz印加による結晶性の改善が、結晶内のサブグレイン間の配向不整と局所的な歪みの減少に起因していることを明らかにしてきた(Cryst. Growth Des. 14, 5662 (2014))。しかしながら、交流電場印加による結晶内のサブグレイン間の配向不整や局所的な歪みの減少のメカニズムの根本は十分に明らかにできていない。 そこで、本申請では、このメカニズムをラマン散乱による結合状態の変化から解明することを目的としている。特に、タンパク質結晶内には水分子が存在し、その一部はタンパク質分子と結合している。本測定では、このタンパク質分子し結合した結合水に注目し、ラマン散乱測定を行った。結果として、1 MHzの交流電場を印加しながら正方晶リゾチームを育成すると、結合水に関与する振動モードの半値幅が減少することが分かった。これは結合水の秩序が高くなったことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、交流電場印加によるタンパク質結晶の完全性改善のメカニズムを解明することを目的としている。特に、交流電場を印加することにより固相のエントロピーの減少が熱力学的に解析されており、このエントロピーの減少が何に起因しているのかに注目して研究を行っている。その結果、ラマン散乱測定により結合水に起因する振動モードの半値幅の減少を確認できており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1 MHzの交流電場を印加すると固相のエントロピーは減少し、20 kHzの交流電場を印加すると液相のエントロピーは増加することが熱力学的に解析されている。そこで、今後は、1 MHzの交流電場を印加しながら育成した正方晶リゾチームの測定も行いつつ、20 kHzの交流電場を印加しながら育成した正方晶リゾチームも準備し、その測定も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた国際会議をキャンセルしたため、その旅費分を次年度に繰り越した。また、2月に購入を計画していた分光光度計が、年度末キャンペーンで5割引の価格で購入できたため、その差額を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
タンパク質粉末等の消耗品を購入していく。
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