研究課題/領域番号 |
15K14485
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
多田隈 尚史 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定研究員 (10339707)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 1分子計測(SMD) / 核酸 / 蛋白質 / 分子機械 / マイクロ・ナノデバイス |
研究実績の概要 |
手のひらに乗るような、検査・治療来期を作成するためには、非常に小型の検出・診断・合成装置が必要であり、DNAの2次元ナノ構造物(DNA-tile)上に多数の蛋白質分子を固定した"DNA-蛋白質ハイブリッドナノシステム"を構築し観察を行った。本年度は、T7-RNAポリメラーゼ(T7-RNA polymerase、以下RNAP)蛋白質をモデルとして用い、ナノ反応場における蛋白質活性の特質を明らかにする事に注力した。具体的には、DNA-tile上にRNAPと、(RNAPが転写する)遺伝子を集積化し(以下Gene-chip)、活性測定した。その結果、Gene-chipには小型反応系構築に都合の良い性質が備わっていた。1つ目は、合理設計性であり、DNA-tile上のRNAPと遺伝子の距離を制御する事で、転写活性を設計できる事が明らかになった。2つ目は、直交性であり、自身の内部遺伝子を高効率に転写する一方、溶液中を漂う外部遺伝子はあまり転写しないという性質が明らかになった。これらの性質を利用する事で、無細胞翻訳系PURE systemにおいて、2つの遺伝子の発現量を合理設計可能である事を示した。また、人工細胞に見立てたエマルジョンの中で、1個のnano-chipの測定を行った所、10^4-10^5のRNAPに相当する活性を持っている事を明らかにした。また、小型反応系構築には、機能モジュールとして1ユニット単体で動作する必要があるが、従来の反応拡散系では、濃度を希釈していくと、ランダムな配分により、重要な因子が欠けてしまい、確実に動作できなくなる可能性があった。一方、gene-chipでは、必要な因子を全部集積化するので、この問題を回避できる可能性がある。そこで、人工細胞を用いて、完結したユニットとして機能することを確認した。これらの結果は、従来は経験則的に反応設計が行われてきた転写活性を工学的なアプローチで反応設計可能な事を示しており、生物化学反応の制御にDNA-蛋白質ハイブリッドナノシステムを用いる事の有用性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、DNAナノ構造上に様々な種類の蛋白質を結合させたナノシステムを構築し、非常に小型の反応系構築を目標としている。初年度は、ナノシステムには、小型反応系構築に有利な性質が備わっていることが明らかとなり、次年度の基盤を確かにした。
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今後の研究の推進方策 |
3つの方向で研究を進める。1つは、多機能化を目指して、様々な生体分子の集積化を試みる。2つ目は高性能化を目指して、集積化する請うその数を増やし、chipあたりの活性向上を目指す。3つ目は、半導体加工技術との組合せを目指す。いずれの方向性に関しても、ナノシステムの特徴である、ナノメートル精度での分子配置という特性を生かし、蛋白質相互作用における分子間距離の影響の評価や、逆に距離制御による反応制御に注力する。
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