研究課題
膜タンパク質の機能を1分子で定量的に評価することは、重要かつ困難な課題である。本研究は、膜タンパク質機能を計測する新しい方法論を創出することを目的として、ガラス基板と高分子エラストマー(ポリジメチルシロキサン:PDMS)にはさまれた厚さ10~100 nmのナノ空間にパターン化人工膜を形成し、膜タンパク質を超高感度(1分子)で解析する技術を開発する。平成29年度には、人工膜とナノ空間を一体化したバイオチップ作製および膜タンパク質1分子観察技術を開発した。人工膜とナノ空間を一体化したバイオチップ作製では、光重合性リン脂質を用いて、ポリマー脂質膜、流動性膜を含んだパターン化人工膜を作製した。そして、厚さの制御された接着層として高密度な親水性高分子鎖(高分子ブラシ)を被覆したシリカ微粒子を用い、人工膜とPDMSを結合することで流動性脂質膜部位の膜とPDMSの間に厚さ10~100 nmのナノ空間が形成した。これまでの検討では接着層に脂質ベシクルや脂質被覆シリカ微粒子、高分子ブラシなどを用いてきたが、今回、高分子ブラシ被覆シリカ微粒子を用いることで、(1)ナノ空間の厚さを厳密に制御、(2)脂溶性分子の非特異的吸着の抑制、(3)安定性の向上(ナノ空間を1週間以上保持できる)、などを実現した。そして、モデルタンパク質として、ウシガエル視細胞由来のロドプシンおよびトランスデューシンを用いて、ナノ空間内部で膜タンパク質を1分子蛍光観察することに成功した。以上の結果の一部は、Langmuir誌に掲載され(Nishimura, Langmuir 33, 5752 (2017))、国内外での学会でも発表した。また、現在、論文執筆中である。
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Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Biomembranes
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