研究課題/領域番号 |
15K14490
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
吉海江 国仁 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 研究員 (20467616)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蛋白質 |
研究実績の概要 |
Secトランスロコンを経由するタンパク質の膜透過は,すべての生物に保存された基本的な細胞内機構の一つである。イオンや小分子の透過を最小限に,タンパク質という巨大な分子を膜透過させるためには緻密なマシーナリが必要である。大腸菌のSecトランスロコンはSecYEG膜タンパク質複合体で構成され,タンパク質透過孔を形成する。SecYEG複合体は単独では機能することができず,別途エネルギーが必要である。細胞質膜に局在に存在するSecA ATPaseはSecYEG複合体と相互作用し,加水分解のエネルギーによる反復運動することによって段階的に,基質タンパク質をSecYEG複合体内に押し込み,タンパク質を膜透過させる。このようなタンパク質の膜透過は生命にとって必須の機構であるため,古くから研究が進められ2000年頃からは各Secタンパク質の立体構造情報が報告された。現在は,構造情報に基づく機能解析に多くの研究がシフトしているが,未だなおこれらSecタンパク質が何両体で機能しているのか,また,どのような構造変化を伴ってタンパク質を膜透過させているのかの詳細については不明である。本研究ではタンパク質の膜透過をin vitroで再現し,高速AFM等を用いてタンパク質膜透過反応を可視化すべく準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク質膜透過反応の可視化にむけた準備段階として,再構成1ユニット系でのタンパク質膜透過反応をin vitroで構築した。次年度,論文として発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質膜透過反応では,蛋白質という巨大な分子を透過させるため,膜の両側に十分なスペースを確保することが必須である。本研究では,ナノパーティクルへSecYEGを再構成し,その粒子を解析可能な形で膜へと固定し,高速AFMによる観察を進める予定である。タンパク質膜透過反応の実態については,これまでいくつかのモデルの提唱がなされている。しかしながら,1ユニットのサンプルを用いて膜透過過程を時間依存的に解析した例はなく,本研究で進める動的解析が成功すれば,初めてタンパク質膜透過反応の可視化に成功することになる。高速AFMの空間分解能はサブナノメートル程度であり,分解能は結晶構造解析にくらべると劣るが,オリゴマー状態や各ドメインの構造変化の追跡は可能である。各因子の構造は既知でありアミノ酸残基レベルでの解析も可能である。本研究により,時間依存的な膜透過反応を捉えれば,当該領域に新たな考え方を提供することになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,サンプルの準備になどに予算を使用する計画だったが,測定における細かな条件検討を進めたため予定よりも使用した予算額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
測定条件の最適化を進めた結果,集中して測定を進めことが可能となった。その様々な測定試料を作製するために,タンパク質の精製を多く進める。前年度からの繰越分は,タンパク質の精製に必要な物品費として利用する。
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