細胞内cAMP発振回路の構築原理を解明するためには、発振回路を構築する機能分子群の定量、操作が有効である。回路構成因子群のGFPノックイン株を用い、その発現量変化についての解析を行ったところ、cAMPパルスに応じて発現増強が起こることが一分子計測によって確認された。しかしながら、どのようなパルス量に、かつ何回のパルス情報によってこうした変化がもたらされるのか不明であったため、これを明らかにするため、パルス量の定量と操作を可能にするための技術開発を行った。細胞外のcAMP濃度を計測するため、超高感度なcAMP指示薬(解離定数:30nM)を開発した。これを用いてパルス量の直接計測を行ったところ25nM-300nMの範囲で細胞外cAMP濃度が変動していることが明らかになった。さらに、cAMPパルスを細胞間で信号伝達遺することは極低濃度のcAMP濃度で十分な一方で、遺伝子発現変動をもたらす有効パルス量は約5倍のパルス量を必要とすることが分かった。パルス濃度への依存性を確認するため、光刺激によりcAMP濃度を局所変動させる技術を用いた操作実験を行った結果、信号伝達、遺伝子発現変化は異なる閾値に加え、パルス回数への依存性を持つことが明らかになった。
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