研究課題/領域番号 |
15K14498
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
森本 雄祐 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (50631777)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 細胞内pH / 蛍光イメージング / 細胞分化 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
細胞内pHは細胞の分化やシグナル伝達において、重要な要因の一つとして働いている。しかし、実際には細胞分化や発生における細胞内pHの詳細な役割は明らかではない。その大きな理由の一つが、生細胞における細胞内pHを高時空間分解能で経時的に計測および制御する技術が成熟してないためである。本研究課題では、オプトジェネティクスの応用による細胞内pHの光刺激制御によって、細胞性粘菌の細胞分化を人為制御することにより、分化の分子機構における細胞内pHの役割を明らかにすることを目指している。これまでに、新規に開発した高感度pHプローブを用いて、細胞性粘菌の分化に伴うダイナミックなpH変化を計測できている。また、細胞内pHの役割を明確にするために、発生過程においてcAMPやカルシウムイオンなどのセカンドメッセンジャーや分化マーカーと細胞質pHを高感度で同時計測することが可能になった。細胞性粘菌は発生にともなって、胞子と柄細胞の大きく2つに分化するが、柄細胞分化にともなって細胞質pHが低下することが1細胞レベルで測定できている。この結果を踏まえ、オプトジェネティクスで用いられるチャネルロドプシンなどの光操作ツールタンパク質を用いて細胞質pHを人為的に低下させる実験系の構築を目指している。しかし、これまでに光操作ツールタンパク質を効率よく細胞性粘菌の形質膜に局在発現する細胞株の構築に至っていない。効率的な実験系の確立のためにも、細胞株の構築を中心に研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規に開発したpH感受性蛍光タンパク質を用いた計測により、細胞性粘菌の柄細胞分化に伴う細胞質pHの低下を1細胞レベルで高感度に計測することを達成している。発生・分化による細胞質pH低下の役割を明らかにするために、細胞質pHを人為的に制御するための実験系の確立を目指しているが、光操作ツールタンパク質を効率的に局在発現する細胞株の構築が達成できておらず、細胞質pHの操作までには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに計測できている細胞分化に伴った細胞質pH変化について、より定量的な計測を行い、細胞分化におけるpH変化量を算出する。また、分化における細胞質pH低下の役割を明らかにするために、細胞性粘菌において光操作ツールタンパク質を効率的に発現する細胞株の構築を進めるとともに、阻害剤や弱酸などを用いた細胞質pHの人為操作実験系の導入も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
光操作等の実験系の確立が遅れているため、それらに使用予定だった試薬等の購入を保留したため。
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次年度使用額の使用計画 |
遅れている実験系の確立を進め、使用予定である。
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