研究実績の概要 |
本研究では、ヒトデ卵を用いて、卵成熟誘起ホルモン(1-methyladenine, 1-MeAde)の卵表受容体の分子実体を明らかにすることを目指しており、本年度には以下の点が判明した。 1.初年度の研究から、1-MeAde結合タンパク質は、p97、p92、p42から成るRendezvin複合体(Rdz複合体)であると判明した。ところが、1-MeAde受容体はGPCRと想定されているにもかかわらず、ヒトデRdz配列中には、細胞膜貫通ドメインもGPCR特異的配列も見当たらなかった。しかし、ヒトデRdz配列中にはCUBドメインが10個存在し、それにはLDL-A moduleが結合すると予測されている。そこで、LDL-A moduleをもつGPCRを検索してGRL101を見出したので、そのヒトデホモログ(GRL)のcDNAをクロン化した。 2.ヒトデGRLのN端側の細胞外ドメインと予想される領域(LDL-A moduleを含む)をin vitroで合成し、ヒトデRdz複合体と結合することを確認した。さらに、この領域を抗原とした抗体を用いて、ヒトデ未成熟卵表層にGRLが存在することを確認した。 3.ヒトデGRLのcDNAを、恒常活性型GPCRとなるように改変した。これのヒトデ卵内での発現や、RdzとGRLそれぞれの種々の領域の抗体により、1-MeAde刺激無しでの卵成熟誘起や1-MeAdeによる卵成熟誘起の阻害を試みているが、現在のところそのような効果は得られていない。 4.これらの結果から、今回得られた1-MeAde結合タンパク質はRdz(細胞外)-GRL(細胞膜内)複合体であると予測されるが、それが実際に1-MeAde受容体として卵成熟誘起のシグナル伝達に関わるかの証明は、今後の課題となった。
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