研究課題/領域番号 |
15K14505
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
千賀 威 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80419431)
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研究分担者 |
増田 章男 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10343203)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞分裂 / アルギニン / メチル化 |
研究実績の概要 |
UBAP2Lはユビキチン結合領域とアルギニンとグリシンに富む配列を有する分子量約130kDaのタンパク質である。このタンパク質の発現を抑制すると、細胞は正常に分裂することができず、多くの細胞は分裂時に細胞死を起こす。私たちはUBAP2Lが細胞内でどのような生理的役割を担っているか検討をおこなった。 UBAP2Lの機能を明らかにするため、UBAP2Lと複合体を形成するタンパク質を網羅的に解析した。その結果、PRMT1というアルギニンのメチル化酵素、及びFMR1、G3BP1、CAPRINというRNA結合タンパク質が複合体を形成することが判明した。そこでまず、UBAP2LのアルギニンがPRMT1によりメチル化されるか特異的抗体を用いて検討した。UBAP2LのN末にはアルギニンとグリシンに富む配列があるが、その領域の複数のアルギニンがPRMT1によりメチル化されることが判明した。また、in vitroの反応においても、UBAP2LのN末がPRMT1により直接メチル化されることが確認できた。メチル化されるアルギニンをすべてアラニンに変えたUABP2Lを細胞内に発現したところ、細胞分裂の進行は顕著に阻害された。アルギニンとグリシンに富む領域はRNAに結合する性質をもつことから、UBAP2LはRNAに結合し、タンパク質の発現に関係していると考えた。そこでUBAP2Lがどのような細胞分裂に関わるタンパク質の発現を制御するか検討したところ、UBAP2Lの発現を抑えるとCENPEというタンパク質の発現が低下することが分かった。メチル化されたUBAP2LはCENPEなどの分裂因子の発現を介して細胞分裂を制御すると考えられる。以上の結果を2016年1月にFASEB Journalに報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した内容で論文を一報発表している。
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今後の研究の推進方策 |
UBAP2Lと結合するタンパク質のいくつかはストレス顆粒に局在することが知られている。ストレス顆粒は、細胞が熱や酸化などの刺激を受けた時に形成される直径5マイクロメートルほどのRNAとタンパク質からなる構造体である。ストレス顆粒の生理的役割は不明であるが、ストレス下における細胞の生存に関与していると考えられている。免疫染色を行ったところ、UBAP2Lはヒ素、過酸化水素、熱、浸透圧などのストレスにより、ストレス顆粒に局在することが明らかとなった。また、UBAP2Lの発現を抑制するとストレス顆粒の形成は阻害され、細胞がストレスによる細胞死により感受性となった。UBAP2Lと他のタンパク質の結合を検討したところ、FXR1とは直接結合し、G3BP1とはsmall RNAを介して結合していることがわかった。UBAP2Lはsmall RNAや他のRNA結合タンパク質と複合体を形成し、RNAの修飾を行っていると考えられる。今後はUBAP2Lがストレス顆粒の形成にどのように関与しているか、またUBAP2L複合体がどのようなRNAの修飾を行っているか検討をしていく。
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