研究課題/領域番号 |
15K14507
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
田村 康 山形大学, 理学部, 准教授 (50631876)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リン脂質 |
研究実績の概要 |
これまで,タンパク質を細胞内で可視化する方法は数多く開発されているが,特定の脂質を細胞内で可視化する技術は殆ど無い。本研究では,細胞内リン脂質輸送反応を,蛍光性アミノリン脂質を細胞内で合成することで可視化,解析する実験系の構築を目指している。この目的のために,大腸菌ホスファチジルセリン(PS)の合成酵素PssAに着目した。PssAは,CDP-ジアシルグリセロール(CDP-DAG)とセリンを反応させ,PSを合成する。この反応において,蛍光ラベルしたセリンを特異的に認識しCDP-DAGと反応させる人工PS合成酵素が創成することで,細胞内の特定の領域で蛍光リン脂質を合成し,観察することが最終目標である。 PssAを酵母PS合成酵素Cho1欠損株内で発現させても,その増殖阻害を回復しないことがわかっていた。そこでCho1欠損株の増殖阻害を抑制するPssA変異体の探索を行った。Cho1は,小胞体膜に局在する複数膜貫通タンパク質であることから,機能を保ったまま細胞内局在を変化させることは難しい。一方,PssAは可溶性タンパク質であるため,シグナル配列を付加させることで,真核細胞内の様々な区画に局在化させることが可能である。そこで,PssAに様々なオルガネラの局在化シグナルを付加した変異体をCho1欠損株内で発現させ,その増殖を確認した。その結果,ミトコンドリア外膜表面,ミトコンドリア膜間部,マトリクス,小胞体膜上(サイトゾル側に露出),小胞体内腔に局在化させたPssAは,Cho1欠損株の増殖を回復させなかったが,PssAを小胞体内腔側から小胞体膜にアンカーさせた場合,Cho1欠損株の増殖が回復することを確認した。この結果は真核細胞内において,PS合成が小胞体内腔の膜上で行われる必要があることを示唆している。今後このタンパク質を改変することで,蛍光リン脂質を合成する酵素の創成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究目標「酵母細胞内で機能するPssA変異体の単離」が達成できていることから,研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
酵母PS合成酵素の機能を相補する大腸菌PS合成酵素が単離できたため,この酵素をコードする遺伝子を,Error-prone DNAポリメラーゼを用いて増幅し,PssA変異体ライブラリーを作製する。次にこの変異PssAをIPTG存在下で発現させる大腸菌ライブラリーを作製する。この大腸菌ライブラリーをコロニーピッカーを用いて,96もしくは384プレートに移植し,蛍光ラベルセリン(NBD-セリン)存在下で培養する。この際にIPTG誘導によって,蛍光シグナルが脂質画分に高く検出される大腸菌株をスクリーニングすることで,蛍光リン脂質合成酵素の単離を目指す。
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