研究課題
ゲノム配列には、タンパク質のアミノ酸配列や発現制御の情報、タンパク質の細胞内局在を規定する情報などが書き込まれている。本研究で着目する膜タンパク質の膜内動態に関連した例としては、例えば、タンパク質がシグナル配列により特定のオルガネラに輸送されることが知られている。しかしながら、輸送先でさらに局在が詳細に規定されるアミノ酸配列が存在するかどうかは不明であり、ゲノム配列に書き込まれた情報についてはまだ我々の理解が限られている可能性がある。近年のイメージング技術の進展により、膜タンパク質の機能が細胞膜の微小環境(例えば脂質ラフト)で変化することがわかってきたが、こうした機能調節もゲノム配列によって規定されている可能性がある。そこで本研究では、細胞内1分子計測を多数の膜タンパク質に適用し、微小環境による拡散動態の変化を網羅的に捉え、膜タンパク質の配列情報から予測される構造と膜内動態の相関を解析できる技術の開発を行った。こうした技術の実現のために、(1)ハイスループット化した細胞内1分子顕微鏡の開発、(2)計測対象となるタンパク質の蛍光標識と安定発現株の作成、(3)得られた1分子画像の1分子トラッキングと拡散統計解析の自動化に関する開発を実施した。これら全ての項目について目標を達成した。こうした網羅的解析により、膜タンパク質の構造(アルファーヘリックスの貫通回数から推定されるタンパク質の半径)と拡散係数の間にSaffman and Delbruckモデルで記述されるような比較的単純な関係が成立する可能性が示唆された。今後は、ゲノム配列に書き込まれた情報の新たな理解へとつなげるために、こうした解析の網羅性をさらに拡張する必要があるだろう。
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