小胞体はタンパク質合成やレドックス制御、そしてカルシウム濃度制御に重要な働きを果たし、これらの制御に異常が生じると小胞体ストレス応答が誘導される。この小胞体ストレス応答を可視化するバイオセンサーが数種類開発されているが、これらは小胞体ストレス応答の後期過程を検出系として利用しており、時間分解能や空間分解能が低いなどの問題点がある。本研究ではこれらの問題点を解決し得る新しい小胞体ストレスバイオセンサーの開発を目的とした。 本研究により、複数の改変型バイオセンサーを作製し、細胞内での発現パターンなどを検討したが、研究を遂行するにあたっていくつかの問題点が生じた。それは、バイオセンサーを細胞内に一過性に発現させるだけで小胞体ストレスが生じることが明らかとなった。調べた結果、単純なトランスフェクションだけで小胞体ストレスが生じていたことより、一過性の発現後のストレス刺激によるバイオセンサーの応答を検出することが非常に困難であった。そこで、バイオセンサーを恒常的に発現する複数の細胞株の樹立を行った。現在、作製した細胞株を用いてバイオセンサーが小胞体ストレスなどの細胞内刺激に応答するかを検討している。今後、作製したバイオセンサーを用いることで、これまで明らかにされていない新規UPRシグナル機構の解析を検討することが期待される。
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