昨年度、CTX分子で保存性の高いカルボキシル末端側のペプチドを合成し、家兎に免疫し抗血清を作製した。この抗血清は、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG抗体を用いたとき、抗原に用いた合成ペプチドに対する力価は1:30000であった。しかし、天然のCTXならびに、変異を導入したリコンビナントCTXをほとんど認識しなかったため、リン脂質親和性測定を試みる際には、毒性を有するCTX7を用い、溶血活性により遊離のCTXの半定量を行なった。CTX7がホスファチジルセリンやホスファチジルエタノーラミンなどの酸性リン脂質に対して強い親和性をもつことが再確認されたが、溶血活性測定による定量法は精度が低く、解離定数(Kd)を求めることはできなかった。毒性の弱い(或いはなくなる)変異を導入したリコンビナントCTXについては定量系が作製できなかったため、封入体からのリホールディングを評価する事が出来なかった。96穴プラスチックプレートに固相化されたホスファチジルコリンが、濃度に関わらず全てホスホリパーゼDにより分解されたことから、固相化されたリン脂質の極性頭部はすべて水相中のタンパク質から接触可能であることが確認された。したがって、微量定量法の確立しているリン脂質結合タンパク質の結合解離に関する研究に、この方法は有効と思われる。毒性の弱い(或いはなくなる)変異を導入したリコンビナントCTXについては、封入体をもちいて抗血清を作製し、酵素標識抗体法を確立し、リホールディング条件を確立し、リン脂質結合プローブとして機能する事を確かめたたい。
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