研究課題/領域番号 |
15K14513
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮内 崇行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00392142)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 代謝 / イメージング |
研究実績の概要 |
白色脂肪組織の脂肪細胞は、脂肪の合成蓄積と分解放出により全身のエネルギー代謝の恒常性を担保し、かつ各種ホルモンを放出することで全身の代謝制御に関与するから、そこでの細胞内情報伝達についての知見は、ヒトの健康増進に有用である。脂肪細胞は「脂肪滴」を内包し、脂肪滴を成長または縮小させることで脂肪の合成蓄積と分解放出を遂行する。脂肪蓄積量の調整に重要なのは合成蓄積と分解放出とのバランスであり、脂肪滴の表面に局在化している「脂肪滴関連蛋白質」の中にも、合成蓄積を促進する因子と、反対に脂肪分解を促進して脂肪滴を小さくする因子が存在する。2型糖尿病など代謝疾患の治療法開発の進歩に繋げていくことを意図し、脂肪滴の上で脂肪合成と分解の適切なバランスがどのように制御されているか明らかにしようと試みた。 手段として選択したのが、増減する脂肪の可視化である。Coherent anti-Stokes Raman scattering (CARS) 顕微鏡により、脂肪細胞モデル培養細胞やマウス脂肪組織白色脂肪細胞の脂肪滴の経時的変化を測定できるようになった。さらに蛍光イメージングと組み合わせることにより、細胞内蛋白質のダイナミックな挙動と脂肪の合成分解を同時に観察出来るようになった。 脂肪の合成蓄積と分解放出の制御因子として重要だと判明したのが、aquaporin-7 (AQP7)である。AQP7は、水だけでなくグリセロールなど電気的中性小分子を透過させる膜蛋白質であり脂肪組織の白色脂肪細胞に発現することも判った。Nullマウスの、脂肪組織の肥大を伴う肥満、糖尿病様の表現型から、AQP7は脂肪代謝に関与すると考えられているがそのメカニズムは不明な部分が大きく、今後、AQP7と脂肪分解/蓄積を制御する蛋白質群との関係を明らかにし、より詳細な機能を記述していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新イメージング手法の元になる顕微鏡の技術的トラブルに遭遇したが、解決して研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、代謝をサブ細胞レベルで高感度に検出する手法を開発する。開発したイメージング手法は、体脂肪の蓄積および分解に関与していると考えられる蛋白質の機能解析に応用することで、代謝異常を伴う疾患(例えば2型糖尿病)の克服へ貢献し得る代謝メカニズム解明へ繋げていく。特に、aquaporin-7 の関与する脂肪分解と蓄積合成の制御のメカニズム記述を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
細胞イメージング装置のトラブルにより、一年目に組み込む部品の購入を2年目に延期したことが大きな理由である。生じたトラブルはレーザーの不安定化。
|
次年度使用額の使用計画 |
装置の開発、改良のための部品購入と、細胞イメージング手法の開発に合わせた安定同位体各種の購入を行う。
|