線虫 C. elegansを使い、単一細胞内の特定 遺伝子座のクロマチン状態を可視化するために注目する遺伝子のフロモーター領域を含むレポーターコンストラクトと lacO 配列を共に線虫に導入し、紫外線を照射することで、レホーターと lacO を数百コピー持つミニ染色体をゲノムに組み込んた(レポーターアレイ)系統を作成した。 線虫の表皮幹細胞は非対称に分裂し、表皮と表皮幹細胞を生み出す。その際、表皮幹細胞では、egl-18/GATA 転写因子遺伝子発現が維持されるが、表皮ではその発現は抑制される。この遺伝子の発現には POP-1/TCF の非対称な転写活性が原因であることが知られており、表皮幹細胞では POP-1/TCFが活性化し egl-18 遺伝子を発現させるが、表皮細胞ではPOP-1/TCF は不活性であり、egl-18 遺伝子を発現しない。この時に、 egl-18 レポーターアレイ系統を用いて、TCF/POP-1 の活性化の前後で、アレイの核内位置の変化を計測した。分裂前の表皮幹細胞では、アレイは核表層から離れた場所に位置しやすく、細胞分裂終期では、表皮細胞と表皮幹細胞の両方のアレイは核表層から離れて位置する。分化した表皮細胞では、アレイは核表層に位置するが、幹細胞では核内部に位置したままである。このような表皮分化の進行に応じた特定遺伝子の単一細胞レベルでの核内動態を観察することが可能となった。 次にegl-18 レポーターアレイに対して、活性化ヒストンマークであるH3K27ac や抑制性ヒストンマークであるH3K27me3 などで免疫染色を行い、レポーターアレイに蓄積するヒストンマークの定量を試みた。egl-18 は発現する表皮幹細胞では、egl-18 レポーター上にH3K27ac の蓄積が見られるのに対し、発現しない上皮細胞ではH3K27ac はより排他的である様子を検出することができた。逆にH3K27me3 は、表皮幹細胞での蓄積が表皮に比べて少ない様子を可視化できた。
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