研究課題/領域番号 |
15K14518
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
森島 信裕 国立研究開発法人理化学研究所, 伊藤ナノ医工学研究室, 専任研究員 (40182232)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小胞体 / カルシウムストア / 筋分化 / 小胞体ストレス / STIM1 |
研究実績の概要 |
カルシウム枯渇モニターとして用いるSTIM1-GFP融合タンパク質の発現 GFPをSTIM1アミノ酸配列の中に含む融合タンパク質をコードするcDNAを作製した。STIM1は小胞体膜を貫通するI型膜タンパク質であり、内腔側に位置するN末端側ドメインはカルシウム結合、小胞体の外側のC末端側ドメインはSTIM1同士の会合の役割をそれぞれ担う。N末端側にGFPを連結すると小胞体膜へのSTIM1の挿入や特異的トポロジー形成を損なう可能性が非常に高い。一方、C末端側への連結はSTIM1タンパク質同士の会合を妨げる恐れがある。そこで、STIM1全長タンパク質のN末端に見出される膜挿入シグナル配列(23番アミノ酸残基まで)とカルシウム結合ドメイン(67番目のアミノ酸残基以降)の間にAcGFPの配列を挟むようなcDNAを作製した。このcDNAを用いて筋芽細胞株内で一過的に発現させると融合タンパク質の蛍光シグナルは網状のパターンとなり、小胞体膜のパターンとよく一致した。作製したcDNAに対してさらにトランスポゾン由来のリピート配列を付加したものを作製し、トランスポゼースcDNAとともに筋芽細胞株に導入して染色体組込み型の安定発現細胞株を作製した。安定発現株においてSTIM1-GFPタンパク質の発現レベルが比較的高い場合には小胞体カルシウム濃度によらずにSTIM1が会合状態となることが判明したため、発現株のクローン化を行い、比較的発現レベルが低く、小胞体カルシウム濃度の変動に依存してSTIM1-GFPの会合、解離が観察される株の選択を行った。これらの株を用いて分化誘導実験を行い、筋芽細胞が融合を開始する前にSTIM1-GFPの会合が起こることを見出した。現在、クローン化した細胞株の中で分化効率のより高いものを選別中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のためにデザインしたGFP融合タンパク質が筋芽細胞内で期待通りの挙動を示しており、さらに安定発現株を得ることができた。この発現株を用いれば筋分化過程において小胞体カルシウム枯渇を起こす時期を特定できる可能性がある。また、発現株に対して遺伝子導入や薬剤処理を行えばカルシウム枯渇を引き起こす条件を探索するツールとして利用できる。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、筋分化過程での小胞体カルシウム枯渇を起こしている原因の特定とこの現象が分化において果たす役割の探求を進める。カルシウム枯渇モニターを有する細胞株のクローン化を行った結果、クローンによって分化効率が大きく異なることが判明したため、より分化効率の高い株を選別し、筋分化過程におけるカルシウム枯渇シグナル系の役割に関する明確な結論を得る条件を整えることを新たな課題として加えた。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度末に所属研究室の主宰者が海外機関に転出し、研究チームが解散したため研究代表者は所属機関内において部局変更した。これに伴い、代表者が行う他の業務内容が変わったため適応のための時間がかかった。また、研究チームが保有していた主要な実験機器が主宰者とともに海外に移管されて利用できなくなり、代替品は完全には確保されていない。これらの理由から研究推進に若干の遅れが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画自体には大きな修正はなく、当初の計画通りに研究を進めるとともに新たに生じた課題にも取り組む予定である。使用計画の内容に変更はないが使用期間が延長される。
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