研究課題/領域番号 |
15K14520
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
笹倉 靖徳 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10400649)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発生・分化 / 生殖細胞 / RNA局在 |
研究実績の概要 |
既存のノックダウン系統について、ターゲット遺伝子のノックダウンの有無と表現型の観察を行った。RNA結合タンパク質をコードする遺伝子3種類、モータータンパク質をコードする遺伝子3種類の遺伝子について解析を行ったが、発生に異常を示す系統を得ることが出来なかった。これは、それらの遺伝子のノックダウンに用いたベクターデザインに原因があると推察された。具体的には、ノックダウンベクターに加えた、ターゲット遺伝子相同領域が十分で無かった可能性を考慮している。また、ノックダウンが生じていても発生に必須ではない遺伝子がターゲットとなっていた可能性もある。 これらのことを受けて、MASK法に並行して遺伝子を破壊する手法を樹立し、遺伝子機能の正確な評価を行うことができるシステムの構築を進めた。カタユウレイボヤではTALENを用いて遺伝子のノックアウトを行うことができるが、生殖細胞系列での遺伝子ノックアウトでは、効率が安定しないことと、煩雑な実験手法が必要となるという問題点があった。生殖細胞の再生をノックアウト法に応用することで、高効率で、かつエレクトロポレーション法で簡単にノックアウト系統を樹立できる新技術を構築した。また、この方法を発展させ、MASK法に必要となるトランスジェニック系統の簡便な構築法も作製した。今後はMASK法と併用することで、卵における母性mRNAの局在機構の解明を目指す。 MASK法の動作原理の解明は、本手法による遺伝子ノックダウンの効率化に必須である。本年度には、MASKを誘導するレポーター遺伝子やベクターバックボーン配列の必要性について、これまで蓄積したデータを論文発表するために必要となる追加データを得た。これまでの仮説通り、MASKの発動にはベクター内にターゲット遺伝子と相同配列以外に必須となるシスエレメントは今のところ存在しないことが裏付けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、RNAの局在に必要な遺伝子の同定にまで至らなかったことが、進捗がやや遅れていると判断した理由であり、来年度にはその点を改善することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今年度構築した、新しいトランスジェニック系統作製方法と、TALEN法による生殖細胞遺伝子ノックアウト法を併用することで、効率よく遺伝子機能を解析し、ホヤの卵におけるmRNA局在機構を明らかにする予定である。また、MASK法の動作原理の解明については、トランスポゾン配列の必要性がまだ示されていないので、この点を明らかにした後に論文としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記の報告書にあるとおり、本年度研究の進捗がやや遅れたため、その分の支出について、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に実行できなかった分子生物学的実験に必要となる試薬と消耗品器具代金、および系統の作製と維持に必要な消耗品費用への使用を予定している。
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