研究課題/領域番号 |
15K14521
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
近藤 真理子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70372414)
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研究分担者 |
高橋 秀治 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (90447318)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 胞胚腔 / 初期発生 / ツメガエル / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
本研究課題ではカエルの初期胚に存在する胞胚腔の役割を解明することを目的としている。胞胚腔が存在する理由は胚の形や構造の維持や、細胞増殖や胚の組織間の情報伝達の場となっていることにあるのではないかと考えられる。今年度はアフリカツメガエル(Xenopus laevis)胚の胞胚腔液成分の解析を目標に、胞胚腔液の採取や解析方法について準備を行った。本研究ではX. laevisの近交系であるJ系統を材料に使う予定だが、条件検討は野生型個体を用いることとした。 アフリカツメガエルの胞胚の容積は約1マイクロリットルとすると、胞胚腔はstage 9ではその1/5から1/6の容積に、stage 10では1/4から1/5の容積に相当するので、200から250ナノリットル の胞胚腔液があると推測した。採取は通常の卵へのインジェクションに用いる系を利用し、胚をフィコール溶液中に置き、針で吸い取る方法を採用した。胞胚腔液を採取しても他の細胞を吸わないように、1つの胚あたりの液量は100ナノリットルを目安にして実施し、ほぼ期待通りの液量が得られた。 また、胚を培養する溶液の塩濃度を変えることによって胞胚腔液の量が変動することがわかっている。実際に低張にすると胚の容積が大きくなるので、今後の採取の際にはやや低張の溶液中に胚を置き、タンパク質濃度が低下しても収量を多くすることにした。 プロテオミクスに用いるゲノム情報の整備も同時に行っており、アセンブルされたゲノム情報をもとに作成されたgene modelの検証や配列の修正も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
胞胚腔液の調製が想定以上に困難でやや滞っているが、パイロット実験をおこなった限りでは胞胚腔液の採取ができている。また、採取方法を最適化するための方策についても研究分担者と連絡を取り合い、技術の向上を図っている。胞胚腔液以外の細胞が採取されてしまうため、解析に使用できる試料の量が限られるところが現状での問題点であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き胞胚腔液の採取をおこない、平成28年度の前半までにプロテオミクス解析を行う予定である。試料の採取については、ツメガエル胚を扱った経験のある研究員の協力をうけ、早急に行う予定である。 胞胚腔液成分のみの解析を行うためには、解析に使用できる試料とできないものとの判別を厳密に行う必要があるので、今後の採取は慎重に行い試料の質を精査する方法も考えつつ行うことにする。これに関しては少量ずつ何回かにわけて採取することで克服が可能と考えている。 当初の予定ではアフリカツメガエル(Xenopus laevis)の近交系を使うことにしていたが、継続的な入手が困難なため、野生型でも実験を行うことにした。また、アフリカツメガエルは異質4倍体のゲノムを持つが、プロテオームの解析には2倍体であるネッタイツメガエル(X. tropicalis)を使った方がいいのではないかとも考えられる。ただし、ネッタイツメガエルの胚はアフリカツメガエルの1/3程度の容積であるため、試料の採取は難しい。進捗状況によってはこの種を用いたプロテオミクス解析も検討したい。プロテオミクス解析に用いるゲノム情報の整備がどちらの種でも完了したので、その使用に関しては問題が無い。 胞胚腔液に含まれる可能性のあるタンパク質の抗体を作成し、胞胚腔液に存在するかどうかを確認するなど、逆のアプローチも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に行おうと予定していたプロテオミクス解析が予定通りには進まず、その経費が未使用となった。当初計上していた物品費は試料調製のための試薬の購入、解析のための各種試薬の購入、材料となるツメガエルの購入と維持費用として使う予定であったが、その一部だけを27年度中に使用したため、残額を生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は研究員の人件費・謝金として500千円を見込んでいる。平成27年度に計上していたプロテオミクス解析の受託にかかる費用の使用を28年度に持ち越すが、解析を基生研の重信特任准教授との共同研究として行うことによって、当初予定していた金額よりも抑えられる予定なので、人件費がまかなえると考えている。
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