研究課題
Xenopus初期胚に存在する胞胚腔の発生における役割は不明である。それを解析するため、胞胚腔液のプロテオーム解析を行い、そこに分泌されているタンパク質を同定し、その意義を検討することを目標に研究を進めた。解析のもととなるアフリカツメガエルXenopus laevisの全ゲノム配列については2016年10月に論文として発表した。昨年度に引き続き、野生型X. laevisの胚を発生させ、ステージ9の胞胚から胞胚腔液を採取した。採取用のガラス針はmRNA顕微注入実験に用いるものと同じものを使用し、インジェクター(Narishige IM-300)を用いてガラス針にmRNAを吸引で充填するのと同じ要領で、ガラス針を胞胚腔に挿入してからゆっくりと吸引した。以前は1つの胞胚から100ナノリットルを目標に採取をおこなったが、卵黄成分が混入していることが明らかとなったので、方法を改善し、吸引の速度をゆっくりにし、1個の胞胚から吸引する液量を減らすことにした。採取した微量の液を、ミネラルオイルを入れたプラスチックシャーレの底にあらかじめ付着させておいたプロテアーゼ阻害剤カクテル2 μlの液の中に入れることで、40個の胞胚の胞胚腔液を一つにまとめることとした。この方法で、1つの胚から50ナノリットルの胞胚腔液を採取できることがわかった。現在これらのサンプルについてはタンパク質量の測定などの解析を進めているところである。
3: やや遅れている
カエル胚の胞胚腔液を用いてプロテオーム解析を行う計画であるが、試料の採取が非常に困難であることが判明し、試行錯誤している状況であるため、研究の進行が遅延している。また、試料の採取の協力を依頼していた研究分担者が病気のため長期の入院をしていて復帰の目処が立たず、協力が得られなくなったことも遅れの大きな要因であった。
現在集めている試料は野生型であるが、ゲノム情報が整備されたJ系統のカエルを入手し、同様の方法で胞胚腔液を採取する予定である。J系統はワタナベ増殖から購入する予定である。すでに基礎生物学研究所の重信秀治博士と打ち合わせを行って、具体的にプロテオーム解析を行う準備を整えた。現在SDS電気泳動し、銀染色あるいはFlamingoを用いた蛍光染色で試料中に存在するタンパク質を確認している。サンプルが使用できるかどうか判断できたらJ系統の試料を採取し、解析を行う予定となっている。また、採取方法を改善して胞胚腔液への卵黄成分の混入を抑えるようにしたが、混入は完全には防げないことが予想されるため、今後、適切なコントロールを見つけて胞胚腔特異的なタンパク質のデータを取得する予定である。
計画した研究が遅延しているため、実験に使用した物品が少なく、支出が少なかったため。
次年度のプロテオーム解析のために必要な試薬、キット類、消耗品を購入する。例えばタンパク質検出のための試薬、遺伝子発現解析のためのRNA合成キットなどを考えている。また、純系のアフリカツメガエルや餌を購入する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
Nature
巻: 538 ページ: 336-343
10.1038/nature19840
Dev Biol
巻: - ページ: -
10.1016/j.ydbio.2016.09.017
10.1016/j.ydbio.2016.07.015
10.1016/j.ydbio.2016.06.015