研究課題/領域番号 |
15K14526
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 淑子 京都大学, 理学研究科, 教授 (10183857)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 血管リモデリング / ニワトリ胚 / 卵黄動脈 / 遺伝子導入 / 血管内皮細胞 / トランスフェクション |
研究実績の概要 |
生体機能の根幹をなす血管ネットワークの形成過程では、最初ランダムに作られた原始血管網が、血管リモデリングと呼ばれる過程を経て、最終的に明瞭なパターンを獲得する。血管リモデリングには血流刺激が必要なことは古くから知られていたが、そのしくみはほとんどわかっていない。本研究では、血流刺激が血管内皮細胞に及ぼす影響を解析し、それがいかにして巨視的な血管リモデリングというダイナミックな形態変化を引き起こすのかを解明することを最終目標と定め、そのために必要な新規実験系を確立することを目的としている。 本年度は、トリ胚を用いた血管内局所的遺伝子導入法を確立すると共に、この技術を用いた血管形成のライブイメージング解析を進めた。血管内局所的遺伝子導入法については、従来はワークしないと思われていた市販のトランスフェクション用試薬を用いたところ、2日目トリ胚の右側卵黄動脈形成領域において、局所的にGFP遺伝子が導入され、モザイク状ではあるが、GFP蛍光蛋白質の発現が認められた。またこの方法をさらに発展させ、RNAi法による遺伝子機能ノックダウン法の開発を試みた。血管内皮細胞に発現し、かつ血管形成に必須であることが知られているVE-cadherin遺伝子のRNAiを、右側卵黄動脈形成領域において施したところ、この領域の血管リモデリングが特異的に阻害された。これらのことから、本研究で開発したトリ胚血管内局所的遺伝子導入法は、遺伝子機能のノックダウンにも有効な方法であることがわかった。 血管形成のライブイメージング解析に関しては、1日目~2日目のニワトリ胚を卵殻から取り出して、ex vivoで10時間にわたりコンフォーカル撮影できる条件を検討した。血流依存的に移動する血管内皮細胞の様子が観察されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血管形成のライブイメージング解析において、1日目~2日目のニワトリ胚を卵殻から取り出して、ex vivoで10時間にわたりコンフォーカル撮影することが必要であるが、非常に初期の胚を用いた場合、途中で発生がストップする例も少なくない。コンフォーカル顕微鏡下におけるex vivo培養の条件検討が必要であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
10時間にわたるex vivo培養に耐える条件を探索すると共に、もっと短時間でのライブイメージング解析に主軸を移し、GFP遺伝子導入された血管内皮細胞の挙動が、血流によってどのように変化するのかについて解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
10時間ex vivo 培養法を用いたコンフォーカルライブイメージング解析の効率が期待したほど高くなく、再現性の高いデータを得るのに時間がかかった。
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次年度使用額の使用計画 |
より短時間のex vivo培養を用いたコンフォーカルライブイメージング解析に主軸を移し、遺伝子導入GFP陽性内皮細胞の挙動を高解像で解析し、血流との相関を観察する予定である。次年度使用額はこれらの解析にあてる。
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