生体機能の根幹をなす血管ネットワークの形成過程では、最初ランダムに作られた原始血管網が、血管リモデリングと呼ばれる過程を経て、最終的に明瞭なパターンを獲得する。血管リモデリングには血流刺激が必要なことは古くから知られていたが、そのしくみはほとんどわかっていない。本研究では、血流刺激が血管内皮細胞に及ぼす影響を解析し、それがいかにして巨視的な血管リモデリングというダイナミックな形態変化を引き起こすのかを解明することを最終目標と定め、そのために必要な新規実験系を確立することを目的としている。 本年度は主に、生体内微小環境における血流の定量化法の開発を進めた。注入した蛍光ビーズを用いた測定や、胚内ですでに分化している赤血球の血流内移動などを指標にして高解像度ビデオ撮影を行ったところ、特に胚体外血管の形成が進む過程において、微小環境血流が刻々と変化する様子を捉えることができた。またこれらの微小環境血流の変化と、Pillarの変化との密な相関が見えてきた。Pillarは非血流領域であり可塑性にとむ細胞集団として振る舞うことから、Pillarの挙動が血流によって制御される結果として、血管内皮細胞の動態が変化する様子がわかってきた。血管リモデリングという極めて重要であるにもかかわらず、これまで捉えどころのなかった現象について、それを支える細胞機能とその制御機構の一端が理解された。
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