研究実績の概要 |
細胞内におけるタンパク質とゲノムDNAとの相互作用の解析は、遺伝子発現制御などのゲノム機能の解明には重要なプロセスである。これには、クロマチン免疫沈降法(ChIP)と呼ばれる手法が用いられるが、ChIPに適した高品質の抗体が必ずしも用意できないなど、現在はさまざまな技術的な制約がある。本研究は、目的タンパク質にビオチンタグなどの特定の短いアミノ酸配列を導入することで、タンパク質-DNAの相互作用を動物胚の特定の組織で高感度に検出する、汎用性がきわめて高い方法の開発を行うことを目的にしている。 本年度は、ビオチンタグを含めて様々なタグを用いたChIPにおける免疫沈降そのものの効率を定量的に測定するアッセイシステムの開発を行った。これまでは、免疫沈降において複合体が適切に回収されているかどうかを定量的に調べるのは困難であった。そこでHiBiT systemと呼ばれるNanoLucルシフェラーゼの2つの断片の相補性を利用した発光定量法を用いて、免疫沈降の効率をモニターする方法を開発した。この方法では、目的タンパク質に11アミノ酸のHiBiTタグを付加することで、免疫沈降された微量のタンパク質の定量を可能にしている。この手法を用いて、まず5種類のエピトープタグFLAG, HA, PA, Ty1, V5に対して高い親和性をもつモノクローナル抗体を選別した。さらに、5種類のエピトープタグとビオチンタグについて、ゼブラフィッシュ胚を用いてChIPを行い、タンパク質とDNAの架橋時間、各エピトープタグの抗体、並びに回収ビーズが免疫沈降におけるタンパク質の回収率に与える影響を調べたところ、条件によって回収率が異なることがわかった。同時に、タンパク質-DNA複合体が特異的に回収されているかをChIP-qPCRで調べたところ、種々の条件が複雑に影響を与えていることがわかった。
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