研究課題/領域番号 |
15K14528
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
三浦 典正 鳥取大学, 医学部, 准教授 (30325005)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | iPS / miRNA / 品質管理 / 線維芽細胞 / CD105 |
研究実績の概要 |
iPS細胞(iPSC)の生体応用が実現しつつある再生医療開発の現状で、作製効率の低さは未解決の課題である。線維芽細胞の一分画であるMuse細胞の存在比率がその効率に影響する可能性が唱えられている。我々は線維芽細胞からMuse細胞群を容易に作製できるヒトマイクロRNA(hsa-miR-520d-5p)を見出し得たことを受け、「患者の線維芽細胞→マイクロRNA導入→Muse細胞大量生産→高効率なiPS作製→細胞治療(再生医療)」の実施プロトコールを最終目標に本検討を実施する。本現象が脱分化誘導に因ると予想している。当該分子の線維芽細胞内への導入により間質性幹細胞マーカー(CD105, CD44, CD90)陽性の細胞を誘導でき、導入細胞のlife spanが4-5倍延長することから、anti-aging(派生細胞への回帰)のメカニズム解明を合わせて行う。 本実証研究が生む成果は、1)再生医療の効率的な実現への道を早め、最も迅速に安全にiPSCを作製できる方法論を確立できる、2)効率が高まることで、本技術が医療システムに取り込まれた際、医療費が安価になる、3)再生医療の安全性向上のメカニズムを学術的に明らかにできる、4)アンチエイジングの応用開発が可能になり、そのメカニズムが明らかになる、 5)国策として推進している再生医療の進歩を間違いなく早めるという社会的効果が期待できる、などを想定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞におけるmiR-520d-5pの効果を評価するための検討では、当該miRNAは癌へ導入されると、次世代シークエンスの結果から、変異を野生型へ戻す効果を有しており、この効果をiPS細胞の品質管理に応用できないか、という課題であった。iPSへの導入後の細胞性機能評価は、最適化が難しいこともあり、形態変化や細胞免疫染色で明瞭に評価できる条件が限られていること、それに行き着くまでに予算を越えて試行錯誤したことが若干の遅滞を生じた理由である。 線維芽細胞への効果に関しては、殺傷性UV照射後のDNA修復機序およびATM抑制下における核ストレスパスウェイのsalvage効果を明らかにし、現在論文投稿中である。これらはアンチエイジング効果につながるもので、人体への応用を目指して順調に検討を深めている。
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今後の研究の推進方策 |
iPS細胞に関して、520dによるリプログラミング効果が強いため、iPSへの導入を行って分化誘導を進めるより、iPSCから誘導が進んだ条件での導入により、不正確な複製を修復できると考えて、外、内、中胚葉への分化が完成した時点で導入する実験系を試みる。癌種では未分化維持環境以外でのiPS化は、本マイクロRNAでは誘導されないことから、間葉系幹細胞維持環境において正常細胞系ではMSCレベルでの修復がなされると考えており、それを検討する。MSCにおける変異修復能を次世代シークエンスで確認するため、予算が整ったときにそれを行う予定である。 線維芽細胞に関しては520dにより、MSC誘導、DNA修復、UV傷害に対する治療的効果が判明したことから、がん治療の毒性評価の一環としての検討であったが、4種の正常細胞に安全であることが証明されたことを受け、皮膚のアンチエイジング効果を深め、かつ角質層湿潤・浸透効果および発毛効果の検討を行う。
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