研究課題/領域番号 |
15K14536
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馳澤 盛一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (40172902)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 成長生理 / 植物ホルモン / シミュレーション / 数理モデル |
研究実績の概要 |
本申請研究では、植物葉表皮細胞などに観られる凹凸の著しい複雑な植物細胞形態がなぜ生じるかについて定量的・数理的な解析を行うことで、従来の定性的な解析では成し得なかった細胞形態形成機構の明確な解明を目的とした。そのためにまず、葉表皮細胞の形状を植物ホルモンおよび細胞壁分解酵素により制御し、細胞形状とともに組織構造を可視化することを試みた。本研究室作成の画像解析ソフトウェアにより、顕微鏡画像から細胞形状を評価するための尺度(細胞面積、細胞周長、細胞複雑度など)を測定し、ホルモン濃度や細胞壁分解酵素処理との関連を調べた。並行して、個々の細胞の隣接細胞数および細胞間の連結面積を測定して表皮組織をグラフ構造として記述することで、細胞ネットワークとして表皮組織を捉えることを検討し、各種プログラムの充実も図った。 並行して、個々の細胞の隣接細胞数および細胞間の連結面積を測定して表皮組織をグラフ構造として記述することで、細胞ネットワークとして表皮組織を捉える試みを行った。このグラフ構造に基づいて仮想的な信号伝達物質の挙動を各ホルモン濃度に応じてシミュレートすることにより、細胞形状に依存した細胞連結様式が細胞間信号伝達に影響する可能性を検証した。このシミュレーション解析にあたっては、想定される信号伝達物質の種類に応じて前提条件を変更して比較検討を行った。同時に、細胞壁を介し細胞形状を制御する表層微小管をはじめとする細胞骨格やオルガネラについてイメージング解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように凹凸の著しい複雑な植物細胞形態がなぜ生じるかについて定量的・数理的な解析を行うための実験系を確立し、基礎データの取得を行った。最終的な目標としては細胞ネットワークとして表皮組織を捉えるべく計画を遂行している。本計画に関しては当初計画していた通りに進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、上述のグラフ構造に基づいて仮想的な信号伝達物質の挙動を各処理に応じてシミュレートする。これにより、細胞形状に依存した細胞連結様式が細胞間信号伝達に影響する可能性を検証する。このシミュレーション解析にあたっては、想定される信号伝達物質の種類に応じて前提条件を変更して比較検討を行う。同時に、細胞壁を介し細胞形状を制御する表層微小管をはじめとする細胞骨格についてイメージング解析を実施し、細胞形状との関連を定量的に把握する。また、細胞骨格阻害剤が細胞形状および細胞連結様式に及ぼす影響を検討し、細胞間信号伝達における役割についても考察する。さらに、表皮細胞壁の湾曲形成機構の研究に数理モデルによる解析を導入するという新規の解析手法により、細胞壁湾入機構に関する統合的な理解を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題研究の研究後半の28年度において大がかりな解析が予想され、その実行に要する材料、器具、人件費等を基金の範囲で次年度使用額とした。また、研究成果の発表について掲載費などの費用にも考慮した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように研究後半において、その実行に要する材料、器具、人件費等を投入し、研究の淀みなき遂行により高い完成度の実績を目指すものである。
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